あなたが淹れてくれる紅茶が好きだった。
なんとなく違和感を覚える味だったし、普通の紅茶の香りとは違う、変な匂いがしたけど、”私のために”と不器用ながらも一生懸命紅茶を淹れてくれるあなたの優しさが大好きだった。
…でも、あんなクセのある紅茶を毎日飲んでいたせいかな。
もう、自分で淹れる紅茶じゃ満足できないんだ。
きっとこれから一生かかっても満足なんかできない。
だから私は、紅茶を淹れるためのティーポットを捨てた。
『るてしいあ』
これは私たちの愛言葉だった。
愛言葉って言っても、あいしてるを逆から読んだだけ。
それでも、私にとっては特別で、大切なものだった。
だから今、貴方が愛言葉を言ってくれなくなった事がとても悲しいの。
どうしたら私の声が届くの?
どうしたら貴方の心は取り戻せるの?
ねぇ…。
『…あいしてる』
友達の大切さが分からない。
友達なんて名ばかりで、卒業したらすぐ、ただの知り合いに戻る。
それに、恋愛が絡んでくるとネチネチとした争いが始まる。
所詮、友達なんてボッチにならない為の道具でしかない。
…まぁ、そういう風に考えてしまうから、私には友達がいないんだろうけどね。
歳を重ねていくにつれて、大切な人がみんな向こう側に行くようになった。
それも、なんの前触れも無く。
そのたびに、"︎︎行かないで"︎︎とは言ってみるものの、届かないこのもどかしさを、どこ捨てたら良いんだろう。
いつか私も、"︎︎行かないで"︎︎と言われる側になるのかな。
いつも下を見ていた。
上を見ると、なんとなく心が締め付けられるような…そんな苦しさが押し寄せてくるから。
どこまでも続く青い空を見ていると、自分を惨めに感じる。
だって私は、こんなに綺麗じゃない。広い心も持ってない。誰にも見てもらえない。
私はこんな風にはなれない。
だから私は一生、その辺の小さい石ころでいるの。