春
二人は、それぞれの友達ができる。どちらも友人関係は順調だ。
夏
二人は、期末テストを通して仲良くなる。一緒に赤点の生徒たちを馬鹿にして笑い合った。
秋
二人は、それぞれの友人を失った。その分、一緒にいる時間が長くなり、二人は付き合った。
冬
二人は、お互いの家を行き来したり、赤点の解答用紙で紙飛行機を飛ばしたりして遊んだ。
〜恋物語〜
暗闇を照らすのは赤い灯火。
真夜中だと言うのに鳴り響くサイレン。
俺は追われている。
早く逃げなければ。
捕まる。
捕まったらヤだ。
だから逃げた。
全力で夜の闇の中を走り抜けていく。
シャツを濡らす汗が気持ちいい。
運動をするのは久しぶりだ。
なんか気分が良くなってきた。
俺は走って、走って、走って。
住宅街を抜け、商店街を抜け、海に辿り着いた。
真夜中の海は、きらきらと光輝いている。
大学生ぶりの青春を堪能したみたいで。
心が踊り、ハッピーになる。
サイレンの音が近くなる。
そして聞いたことのある音になる。
ピピピ。ピピピ。ピピピピピピピ。
僕は目を覚ました。
「まーた他人の夢か。この人、だいぶおかしいんじゃないか?」
僕は独りぼやきながら、目覚まし時計を見やる。
まだ2時か。
うーん。運動でもするかぁー。
僕は都会の街を駆けていく。
真夜中なのに外は明るい。
適当にあたりを走ってから家に戻ると、時刻は3時。
久しぶりに走って思ったのは、ビル風がクソうざかった。
「とりあえず二度寝しよ」
漫然と、僕らの夜は更けていった。
〜真夜中〜
愛があればなんでもできる?
聞き間違いかと疑った。
明らかに面接において不要な質問を眼前の面接官はしてきたのだ。
一対一の面接である。
突然そのようなことを言い出すのだから、私の緊張は一気に弛緩した。
まあ、聞き間違いかもしれない。
「えっと、すいません。もう一度お願いします」
「いいよ。愛があればなんでもできる?」
聞き間違いではなかった。
面接官は満更でも無い表情で、こともなげに言う。
私より二十は上の男である。
丁寧語くらい使えと言いたいところだが、仕方ない考えてみるか。
うむ。
そもそも私は愛を知らない。
生まれてすぐに英才教育が始まった。父も母も厳格な人だった。与えられたのは知識ばかりで愛情は無に等しい。
それゆえ、質問には答えかねる。
そもそも私は、まだ小学六年生である。
小学生にする質問だろうか?
受ける中学校を間違えたか?
無論、小学生の私に恋人といえる者もいない。
愛など知る由もないのだ。
しかし結論は出ていた。
愛などなくてもなんでもできる。
私は現時点で大学数学を解けるほどの天才小学生である。
勉強だけじゃない。この前の運動会で赤組を優勝に導いたのは私のおかげだと自負している。
だから、答えは――。
「え、あ、ごめんね。泣かせるつもりではなかったんだよ。ただ、君があまりに賢い答えをするから、つい気になってしまって」
私は泣いていた。
それが恥ずかしくて、逃げるように席を立ち、教室を後にした。
校門を出ると、父と母がいた。
二人は優しい口調で何があったのか訊いてきた。
偽りなく、事実を話した。
怒られると思った。
けれど、二人から出た回答は予想に反したものだった。そしてすぐに二人の体温に包まれた。
私は愛されていた。
今の私なら、なんでもできそうな気がする。
愛があればなんでもできる。そう思えた。
〜愛があればなんでもできる?〜
君に恋するべきじゃなかった。
そうやって悔いたところで意味はないかもしれない。
もう10年だ。
10年経った。
もうすぐ忘れそうだったのに。
気づけば10年前に戻っていた。
「あ、待って」
君は振り返る。
青チェックのスカートがふわりと浮いた。
「だれ?」
「俺」
その綺麗な顔を黒く塗り潰すとも知らず。
君は無垢な笑顔を向けてくる。
「んふっ。面白いね、お前」
懐かしい響き。初対面でお前呼ばわりしてくる子を君以外に知らない。
「君は変だ」
「ふへへ。お前もね」
俺は再び恋をした。
やがて後悔するだろう。
それでも衝動は止まらない。
どうしよもなく君が好きだから。
〜後悔〜
「ふぉおおおおおおおおおおおお!!」
ほっぺたが落っこちた。
そんな錯覚をおぼえるくらいに強い風だ。頬がぶるぶるとふるえている。
都会のビル風は楽しい。
わたしの趣味のひとつ。いや、唯一の趣味だ。
ビル風散歩。
これで何年目だろうか?
いろんなビルの隙間をわたり歩いてきた。やっぱり街道沿いのビル風は気持ちいい。
お気に入りのビルの隙間を抜けて今日もゆく。
風に身をまかせ。
〜風に身をまかせ〜