ー空に向かってー
空に向かって顔を上げる。
下を向いてはいけない。
ネガティブになってしまわないように。
前を向いてはいけない。
辛くて苦しい現実を見ないように。
後ろを向いてはいけない。
過去に囚われてしまわないように。
隣を見てはいけない。
眩しい周りと比較しないように。
だから空だけ見ればいい。
嫌な未来も、過去も、現実も、友達も。
全部見たくないから。
空に向かって逃げてしまおう。
それで転んだって構わない。
傷は酷く痛むけど、気にするべきはそこじゃない。
現実逃避?意味不明?
なんとだって言えばいい。
死にたくないより生きていたい。
何も無い虚空へと逃げたっていいじゃない。
ーまたね!ー
「またね!」
そう言って君は電車に乗った。
そして君は居なくなった。
私を残してどこか遠くへ行ってしまった。
私はいつも孤独だった。
そんな孤独を破ってくれたのは君だった。
私は君に救われた気がした。
実際は君に足を救われていたようだった。
私はいつもの孤独に帰った。
話しかける人は居なかった。
君の笑顔が消えて、私の色も消えた。
そんな無色に色が宿った。
知らない誰かが逢いに来た。
私に逢いに来た。
彼女は「またね!」と手を振った。
やめて。
やめて。
「またね」だなんて言わないで。
別れが悲しくなるから。
痛みに気づかずいたいから。
また逢えると希望を見てしまうから。
別れるならいっそ「さよなら」といって。
「またね!」と呪いをかけないで。
ー涙ー
「泣かないで」
そんな情けの言葉をかけられる自分が嫌で涙が出るんだ。話しかけないでくれ。
「ほら、笑って!」
泣いてる状態で笑えるわけが無いだろう?
取り繕えないのが嫌で泣いてるんだから。
「早く泣きやめよ」
泣きたくて泣いてるわけないだろう?
それが嫌でまた涙が出るんだ。
「冗談だって!」
お前はそれで何度私を抉ったんだろうね?
それでも真に受ける私が嫌で涙が出る。
「何か嫌なことがあったの?」
この空気とそれを作る自分が嫌な出来事だよ
結局私が悪いのさ。
過去の思い出と心情が、
今もトラウマで現れる。
「涙は嬉しい時にも流れる」なんて嘘つきだ。
涙は、
涙を流す思い出は、
全部私のトラウマだ。
ー小さな幸せー
例えば、幸せに寝られるふかふかのベッド。
バターの溶けた美味しいパンの香り。
朝の柔らかい日差しと、昼の私たちを照らす太陽、夜の優しい星の光。
友と過ごす何気ない時間。
親と過ごす何気ない時間。
耳で感じる優しい風。
そんな小さな幸せが積み重なって、きっと幸せを届けていくのだろう。
ああ、それで満足出来ればどれほど良かったものか。
嫌いな彼が怒られた瞬間。
嫌いな彼女が、他の人にも嫌われていると知った瞬間。
嫌いな奴が疎外感を感じていた瞬間。
そんな自分は、無関係だとしらを切ってやった瞬間。
ああ、この歪んだ瞬間一つ一つが小さな幸せだと。
そう思えるほどまで世界は狂ったのか。
そう思う程私は曲がってしまったのか。
ー七色ー
昔は虹色だったと思う。
赤は頑張ろうとする努力。
橙は溢れ出す活動力、元気。
黄色は楽しかった思い出。
黄緑は優しい思い出。
緑は自然の暖かさ。
青はいつも味方になる知識。
紫はちょっとした前へ進むための嫉妬。
きっと、混ざってもある程度どうにかなった
そんな色をパレットに塗りたくった。
今は汚いドブ色だろう。
嘘か本当か分からなくなった偽善の灰色。
打ちのめされて光を失った黄土色。
苦い思い出を残した深緑。
嫉妬や執着がまとわりついた暗い紫。
ストレスで掻きむしった肌の赤黒さ。
夜の暗さに落ち着いた深い青。
仕上げに自分をこの世から消してしまいたいと何度も願った夜の黒。
全て混ざって、全て汚れた。
そんなどうかしてしまった色。
そんな七色を
イーゼルの落ちてる床に塗りたくった。