ーふとした瞬間ー
ふとした瞬間、自分が嫌われてる気がする。
あそこで話してる女子たちは、私の悪口を言ってる気がする。
あそこの班のメンバーも、私を嫌がってる気がする。
友達にすら、嫌がられてる気がする。
友達ということすらおこがましく感じる。
親に恥をかかせている気がする。
生まれてきたことに申し訳なくなる。
そして、間違えた選択を思い出す。
恥ずかしい思い出が次々と出てくる。
そんな瞬間、本当に死にたくなる。
全てを投げ出したくなる。
全ての人に忘れて欲しくなる。
全ての人に嫌われた気がする。
死にたくなるより、消えたくなる。
誰にも何も言われたくない。
気にかけられることすら嫌になる。
そして吐き気を催す。
嫌なフラッシュバックを出さないで。
だから私は、考えるのが消えた時の
ーふとした瞬間ーが大嫌い
ーどこへ行こうー
人と話すのが苦手だ。
何を考えてるか分からない。
自然な模範解答が出てこない。
そんな姿を見て笑われている気がする。
気持ち悪く思われてる気がする。
私が話しかけたら迷惑な気がする。
嫌がる気がする。
被害妄想が広がる。
自分はダメな人間だと自覚する。
自分は社会不適合者だと分かる。
どこに行ったら楽なんだろう。
どこなら気を使われないんだろう。
どこなら嫌がられないんだろう。
全てに嫌われている気がする私は、
全てのものから逃げ出した。
長い自己嫌悪を抜けると、
そこはゴールじゃなかった。
ゴールなどなかった。
私の杞憂がある限り、私の安寧は訪れない。
自分の心の安らぐ一人の殻に閉じこもっていると、外の誰かに殻を無理やり突き破られた
行き方なんて分からない。
生き方なんて分からない。
ああ、ああ、どこへ行こう
ー物語の始まりー
物語の主人公はきっと、 天才だから。
最初から最強な天才かもしれないし、
虐められてきたけど後から才能を発揮する天才かもしれない。
だからきっと私は主人公にはなれない。
普通は主人公になれないもの。
中途半端な主人公なんていらないもの。
平凡より少し上。
ライバルにはなれても、主人公にはなれない
誰も救えない、何も変えられない。
強くはなれない、弱いだけ。
それがモブだから。
私は才能を持たない。
努力する気も到底ない。
それを悲しいとは思わない。
自分を強いと思い込む、そんな痛いやつにはなりたくない。
きっとこれでいいのでしょう。
きっとこれがいいのでしょう。
変に何かを求めたら、
私は消えてなくなるから。
私が主人公だなんて、そんなくだらない物語
誰が手に取るのでしょう?
だから私は傍観者でいい。
望んでするのは後悔だから。
見なくていいのは救いだから。
ああ、キラキラ輝いてるあの子は
きっと主人公なのでしょうね。
見届けるわけでもそこに入るわけでも無い。
だけど私は見て知るのでしょう。
このー物語の始まりと結末をー
ー静かな情熱ー
この勝負に勝ちたい。
負けたくない。
昔の運動会、私に燃えた情熱。
他のクラスメイトに比べたら弱い火だったかもしれない。
熱情とは、決して言えない「!」もつかないような微かな想い。
多分それぐらいの時に情熱は冷やされてしまったのだろう。
ついていけない社会に、
何も出来ない無力で非力な私。
できないんじゃない、 やれないんだ。
何かをなしとげたかったけど
結局何も出来ないんだ。
そんな状態に悔しいとも思えなくなってしまうほど、私の熱は冷えきった。
だけど、この熱までは微熱が残っているから
生きたいという気持ちはとうに失せたけど、
死にたくないという惨めな気持ちは残ってるから。
追いつきたいという気持ちはとうに無いけど
人を妬む醜い心はまだ生きてるから。
こんな小さい、惨めで汚い姿だけど
これが私の静かな情熱だから
ー未来図ー
たくさんの絵の具があった。
色んな色を調合した。
未来図に、色をつけていった。
とてもカラフルで素敵な色だった。
他の人のキャンバスを見た。
皆とても個性的だった。
私もそうしようと思った。
苦手な色を無理に使おうとした。
あーあ、またやらかした。
早とちりしたせいで色は滲んでしまった。
色を抜こうとしてティッシュをとったら
紙が破けてふにゃふにゃだ。
失敗、失敗、また失敗。
元々不安定な色彩に余計なものを加えたんだ。
もう全て嫌になって、
思いっきりイーゼルを蹴り飛ばした。
滲みきれなかった絵の具が飛び出して
床にびちゃっとこびりついた。
汚い。
絵も床もこの場所も
汚い。
出来てないのに出来た振りをする醜い心が。
どこから間違えたのだろう。
最初から間違っていたのだろう。
予定も立てずに、
皆に追いつこうとして焦ったから。
こんなことになるんだったら。
こんな気持ちになるんだったら。
絵なんて描くものじゃない。
未来なんて予想するものでは無い。
未来図なんて、あっても意味なんてない。