あおみどりいろ。

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12/24/2025, 11:00:10 AM

熱がでた日


顔をまっかにして寝込む私に母はアイスを買ってきた


カップのバニラアイス


母が、ほっそりとした白い腕をのばし

私の口へ運ぶ

銀のスプーンがカチャリと前歯にあたって

熱で、アイスはのどへ溶けていった


母は覚えていた

可愛らしいパステルカラーで描かれた絵本

リスのおかあさんが熱をだした子の口にそっと運んだしろいアイス


「さくちゃんが熱だしたらアイスがたべたいなあ」


小さな私は母に無邪気にわらう

パステルカラーの絵を指さして


ああ母は

私のために

私を思って

小さな、カップの、バニラアイスを...


白い宝石

冷たいけれど、あたたかな。



そしてしばらくして

私はまた風邪をひいた


玄関の開く音

母のただいまという小さな声



ああ、またあのバニラアイスが......



「明日は学校休まないでよ」



母は、もうアイスを買ってこなかった


すこしだけ、楽しみにしていたけれど


すこしだけ、すこしだけ...



それでも、バニラアイスを食べるたびに


あの日の、若く綺麗な母を


熱でとけたバニラの味を


じんわりと


宝石のように


思い出すのです

12/18/2025, 4:25:14 AM

はじめて、母に外に出された日。

雪がふっていた。


がちゃり、鍵を閉める音。


どさり、雪に倒れ込む音。


きーん、これは耳鳴り。


じーん、足先から凍っていく。


鼻先に雪がつもる。


雪がつもる。


まつ毛に雪がつもった。

視界がしろくかすむ。


しんしんと、雪がふる。


青い雪国。


ちかちか、揺れるオレンジの街灯。


きらきら、カーテンの隙間からさす、キャラメル色の光。


お母さん、わたし裸足だよ。

靴下がほしいよ。


じんじん、痛む頬。


しんしん、ふりつもる雪。


きんきん、凍る足先。


雪。


雪。


雪。


こころに、雪がふる。


じーん、足先から、こころまで。


窓の中から、あたたかい笑い声。




12/14/2025, 2:05:22 PM

こわいな。


生きるのをやめるということは、こんなにも身がすくむことなのか。

生きることの美しさ、せかいのあたたかさ、夜空のきらめきを知ってしまったのだ。


産声をあげたその時から、もう砂はおちていたのだ。


砂時計。

ああ、砂がおちきるその時まで待たずに去るということの恐ろしさ。

このかがやく地球に背を向けることの寂しさ。

あなたの体温をもう感じられないことのくるしさ。

好きな音楽に身をまかせ、踊れないことのもどかしさ。


地球。

なんてきれいな星なんだろう。

暗闇に静かに佇む水と緑の星。

生きることのうつくしさを教えてくれたね。


こわい。

こわい。

なんて、こわいのだろう。


生きるために、もがいたさ。

幸せを感じていたくて、汗を流したさ。


泡。

生きたくて、溺れたさ。

泡をだして、泳いださ。

泳いで、あなたを愛しにいったのさ。

愛して、溺れたのさ。

あなたを、わたしを憎みたくなどないのさ。


地球へ、背をむける。

月へ、顔をむける。


ああ、きれいな宇宙よ。


暗闇の女王よ。


どうか、どうか、抱きしめて。


宇宙に、溶けて、沈んで、広がって。


うすく、うすく。


しかし、広く、広く。