熱がでた日
顔をまっかにして寝込む私に母はアイスを買ってきた
カップのバニラアイス
母が、ほっそりとした白い腕をのばし
私の口へ運ぶ
銀のスプーンがカチャリと前歯にあたって
熱で、アイスはのどへ溶けていった
母は覚えていた
可愛らしいパステルカラーで描かれた絵本
リスのおかあさんが熱をだした子の口にそっと運んだしろいアイス
「さくちゃんが熱だしたらアイスがたべたいなあ」
小さな私は母に無邪気にわらう
パステルカラーの絵を指さして
ああ母は
私のために
私を思って
小さな、カップの、バニラアイスを...
白い宝石
冷たいけれど、あたたかな。
そしてしばらくして
私はまた風邪をひいた
玄関の開く音
母のただいまという小さな声
ああ、またあのバニラアイスが......
「明日は学校休まないでよ」
母は、もうアイスを買ってこなかった
すこしだけ、楽しみにしていたけれど
すこしだけ、すこしだけ...
それでも、バニラアイスを食べるたびに
あの日の、若く綺麗な母を
熱でとけたバニラの味を
じんわりと
宝石のように
思い出すのです
12/24/2025, 11:00:10 AM