私と彼女を繋ぐ、赤く染まった糸が途切れた。ひたひたと地面に垂れ落ちる赤は鮮やかさを失い黒く澱んでいく。
「終わりだね。」
「っ……」
彼女は途切れた赤い糸を未だ滴らせる鋭利なそれを私の胸元に深く突き刺した。痛みなんて、もう感じなかった。
ねぇ、もし私たち同じ場所で生まれて、同じ場所で育ったなら、お友達になれてたと思うの。こうやって血に塗れる戦場で、何も知らずに剣を振るうことも無く。友達になりたかったんだ、って…言えたら、よかったのに…。
「ああ、今行くよ。」
かつて同じ世界で手を繋いだ2人は、もう一度思いを馳せる。切った糸を繋ぎ直すように。
今度こそ、幸せになれるように。
【赤い糸】
「あ!!龍の巣だ!!」
「どこで覚えたのそんなの」
「映画で見たんだよ、あれ雷がいっぱいある雲なんだ。」
もう映画館では見られない、映画の話。
【入道雲】
お祭り、来年も一緒に行こうねって言ったんだけどね。
【夏】
一年前、まだ新しい履き慣れないローファーで足を痛めながら通った高校生活。今ではすっかり運動靴に変わっている。残念ながらローファーになれるまでの忍耐力を持ち合わせていなかったのだ。クラスの友達や周りの人のローファーを見るたび、「この子は修行を耐え抜いた猛者なのか…」と驚く。
それが、つい先日までの話。すっかり履き慣れた運動靴を履き、よれたスクバを背負い、チャリを漕ぐ。もう、受験に追われる日々だ。
だけど、一年後、高校以上にやりたいことに打ち込める、楽しい日々があると思うと、少しだけ頑張ろうって拳を握れるんだ。
頑張ろう、コロナ明けの元通りの受験生。
【一年後】
「え、先に食べちゃうの?」
先輩とのお昼、いつも通りシフォンケーキを引く。
「え、食べないんですか?」
「いや、普通デザートって最後じゃない?」
驚いたように指摘されて驚く。私にとってデザートは誰にも取られたくない大好きなものだから一番最初に味わいたいものだったから同じように私も驚いた。
「先輩こそ、食べないんですか。最初に食べないと、なんかこう、勿体無い感じがしません?」
「あー…言いたいことはわかる。でもうち甘いもの苦手だからあった時は最初に食べちゃうなぁ。」
「え、嘘。苦手なものって最後じゃないんですか?」
甘い甘いチョコレートのケーキは同じなようで違う世界を持っていた。でも、これが私たちのあたりまえ。
こんなくだらない日常でも、やっぱりシフォンケーキは美味しいのだ。
【日常】