【もしも未来を見れるなら】
過去なら、見てみたいと思うことがある。
変わらない事実があることに安心するから。
過去の自分が、必死にもがいて生きて。
でも、未来は見たくないかもしれない。
変わらない事実に不安になるから。
社会の荒波の中で揉まれて、苦しんで。
変わっている自覚もないまま変わっていくほうが、
ずっといい。
fin.
【無色の世界】
透明な部屋に閉じ込められた。
入口も見えなければ、出口も見えない。
目の前に見えるのは、ただ続く透明な道だけ。
境界線があるわけではないのに、道が続いているのが分かる。
歩いてみれば、どうなるのだろう。
好奇心に誘われて、小さく足を踏み出す。
自分の足音だけが響く。
どこまでも続いている道を歩き始めた。
fin.
【桜散る】
毎年散る桜だと思っていた
【誰よりも、ずっと】
離れていく。
手を伸ばしても、離れていく。
大切なものこそ、離れていく。
離れないと思っていたのは、俺だけだったのか。
二人でー。
きちんと話したことはなかったけれど、ずっと一緒だと思っていた。
一人になるなんて、思っていなかった。
一人にしないでほしい。
そう言って子どもっぽく手を伸ばすことすらできなかった。
大切にしているつもりだった。
今までの誰より、ずっと。
fin.
【君の目を見つめると】
「ピンクムーンって言うらしいよ、今日の月」
親友と遊びに出かけた帰り道。
まんまるな月を見上げて、隣の彼はそうはしゃいだように言った。
「へー、全然ピンクに見えないけど」
「そう呼ばれてるだけ。ピンクになるわけじゃないよ」
綺麗な月だなと思う。満月なのかもしれない。
ぼんやり考えていると、彼の声が邪魔をした。
「なぁ、」
横を見ると、目が合う。
「ん?」
「月が、綺麗ですね」
無意識に足が止まる。目線を外せずにいると、ニヤリといたずらに笑った。
「なーんて。彼女に言う練習だよ」
「お前彼女いないだろ」
慌ててツッコむ。
「あーあ、彼女欲しー!」
いつも通りに話しながら、ピンクムーンを見るたびに彼のことを思い出すのだろうと思った。
fin.