【誰よりも、ずっと】
離れていく。
手を伸ばしても、離れていく。
大切なものこそ、離れていく。
離れないと思っていたのは、俺だけだったのか。
二人でー。
きちんと話したことはなかったけれど、ずっと一緒だと思っていた。
一人になるなんて、思っていなかった。
一人にしないでほしい。
そう言って子どもっぽく手を伸ばすことすらできなかった。
大切にしているつもりだった。
今までの誰より、ずっと。
fin.
【君の目を見つめると】
「ピンクムーンって言うらしいよ、今日の月」
親友と遊びに出かけた帰り道。
まんまるな月を見上げて、隣の彼はそうはしゃいだように言った。
「へー、全然ピンクに見えないけど」
「そう呼ばれてるだけ。ピンクになるわけじゃないよ」
綺麗な月だなと思う。満月なのかもしれない。
ぼんやり考えていると、彼の声が邪魔をした。
「なぁ、」
横を見ると、目が合う。
「ん?」
「月が、綺麗ですね」
無意識に足が止まる。目線を外せずにいると、ニヤリといたずらに笑った。
「なーんて。彼女に言う練習だよ」
「お前彼女いないだろ」
慌ててツッコむ。
「あーあ、彼女欲しー!」
いつも通りに話しながら、ピンクムーンを見るたびに彼のことを思い出すのだろうと思った。
fin.
【好きだよ】
「好きだよ」
この言葉がこんなに悲しかったのは、初めてだった。
叶わない恋だと分かっていたからだろうか。
「僕も、そのゲーム」
そう誤魔化すように言葉を続けて、ふっと口角を上げる。
【幸せに】
「君のこと、幸せにさせてほしい」
一生分の覚悟と勇気を持って、僕は言った。
それなのに、
「何それ」
呆れたように彼女は笑う。
あっけにとられた僕が固まっていると、
「一緒に、幸せになろう」
そう手を握られた。
ハッとする。何を勘違いしていたのだろう。
「これからも、よろしくね」
いたずらっぽく彼女が顔を覗き込む。
でも、その耳は真っ赤に染まっていて
「こちらこそ、よろしく」
愛おしいなと思った。
fin.
【ハッピーエンド】
人生は、ハッピーエンドだろうか。
バッドエンドでもいいような気がする。