【ないものねだり】
ねだっている自分が、みじめになる。
【好きじゃないのに】
「卒業おめでとう」
「ありがとう」
中学校の卒業式。
家は隣同士で、親も仲がいい。
物心がつく前から知っているらしい。
俺のほうが一つ上だが、変わらず仲はいい。
「また、先に行っちゃうんだね」
「しょうがないだろ」
「……頑張ってね、高校でも」
「おう」
手に持った卒業証書がズンと重くなる。
「……俺の第二ボタン、やるよ」
「え?」
「誰にも取られなかった、俺の第二ボタン」
「いいの?」
横顔がほんのり赤い。
力任せに第二ボタンを引きちぎって、渡した。
「……好きじゃないけど、もらってあげる。ありがとね」
fin.
【ところにより雨】
「……ところにより雨が降るでしょう」
お天気キャスターの明るい声がテレビ越しに響いた。
弁当を作っていた手を止めて、折りたたみ傘をバッグに入れる。
お気に入りの水色の傘。
降らないといいなと思いながら、弁当の蓋を閉じる。
今日は、卵焼きが上手く巻けた。
食べるのが楽しみだ。
「いってきます」
fin.
【二人ぼっち】
「ねぇ、君」
いつも通りお弁当を食べていると、綺麗な声が聞こえた。
「一人?」
「……はい」
「一緒に食べていい?」
制服の名札を見ると、一つ上の学年。
僕がうなずくのを待たずに隣に座る。
「いつもここで食べてるの?」
「……文句ありますか」
人目につかない階段の踊り場。
彼のようにきらきらした人には分からないだろう。
イラついて、つい突っかかる。
「ないない。これからも、来ていい?」
「え?」
「二人ぼっち、ってことで」
fin.
【胸が高鳴る】
1番になりたい。
他の誰にも邪魔されない、1番になりたい。
恋心と言うより独占欲のようなそれに、ため息をつく。
縛り付けたいわけではない。
ただ、私のそばで笑っていてほしい。
隣で眠る彼にそっとキスをした。
fin.