【永遠に】
永遠、なんてないと思う。
私が中学校の3年間を捧げたアイドルたちは、目にも止まらないスピードで辞めていった。
大好きな人がいなくなる感覚。
別の道に進む彼らを応援する気持ちはあっても、素直に「いってらっしゃい」は言えなかった。
帰ってこない「いってらっしゃい」なんて、悲しすぎる。
でも、「おかえり」を言う私たちを残してくれているのが明日デビュー日を迎える彼らだ。
この数年間、私は待つのが得意になった。
帰ってきてくれるのがわかりきっているから。
痛いだけのオタクかもしれないが、信じている。
信じて、「おかえり」を言うことだけが使命だと思う。
fin.
【理想郷】
「東京に行きたい」
家族に言うのは初めてだったけれど、ずっと考えていたことだった。
「東京なんて、やめておきなさい」
母にそう反対されるのはわかりきっていた。
「東京に行って、何がしたいんだ?」
父だけが落ち着いて話を聞こうとしてくれる。
まぁ、本当は落ち着いていないのかもしれないけれど。
「東京で、音楽の勉強がしたい。ここよりもっと広い場所で自分の才能を試してみたい」
「東京なんて、行かせられない。よく考えなさい」
そう言って、母は台所に向かった。
「…考えた結果だよ。ねぇ、」
わかってよ。
いつの間にか父もいなくなっていた。
未来への道は、閉ざされたまま。
fin.
【懐かしく思うこと】
今回のテーマは、何も思い浮かばなかったです。
でも、続けてる記録が途絶えるのも気持ち悪いので、この文章だけ上げさせていただきます。
今日は、もうちょっと頑張ります。
【もう一つの物語】
たまに、ぼんやり考える。
女じゃなくて、男として生まれて。
長女じゃなくて、末っ子として生まれて。
本だけじゃなくて、ゲームも与えられて。
田舎じゃなくて、都会に住んでいて。
塾に通うんじゃなくて、外で楽しく遊んで。
三次元じゃなくて、二次元を好きになって。
美術部じゃなくて、テニス部に入って。
国語じゃなくて、数学が得意で。
隅っこじゃなくて、中心にいて。
図書館じゃなくて、カフェに行って。
彼女じゃなくて、彼氏ができて。
︙
たまに、ぼんやり考える。
別の生き方もあったのかもなって。
たった一つ、違うだけで。
無数の道が繋がってるんだ。
fin.
【暗がりの中で】
いくらリストカットやODを繰り返しても、消えない気持ち。
病み曲に共感しても、変わらない気持ち。
声を殺して涙を流しても、溢れる気持ち。
間違っているとわかりきっていても、止まらない。
きっと当てはまる言葉なんてない、言いようのない不安。
自分が何者か、ぼんやりともやがかかる。
そんな夜を乗り越えると、いつも通りの朝が広がっていた。
はしゃいだ小学生の声。
炊きたてのお米とみそ汁のにおい。
急かすような踏切の音。
カーテンの端からこぼれる朝日が明るい。
大丈夫、と小さくつぶやく。
リストカットの跡がじんじん痛んでも、不安は薄らいでいた。
制服に袖を通して、顔を洗う。
リビングのドアを開けると、
「おはよう」
いつもの声が聞こえた。
fin.