霜降る朝
凍てついた空気
息が白く溶けていく
粋なドレスを纏った椿の
写真を撮って
霜をはらって
夜中に冷えた
植木鉢にすら
霜はまだ残っていた
夢の断片
この夢を見ると恐怖に陥る。形もなく、音もない世界。そんな世界に放り込まれる夢。
時々、走馬灯のようにその夢の情景が走り去る。起きている時もそう。どんな夢かも分からないし、ストーリーもない。ただ、あの夢を思い出すと心臓がゾクッとする。
前世のトラウマかと思う時もある。その夢は現実とは思えない姿をしていて、広くて、気温すらない。
何か大きな丸や四角のような形を持たない物体がこちらに迫ってくる。さらに、かすかに歌も聞こえる。何の歌か分からないが、その歌を聞くと冷や汗が出る。
そして、その世界には誰もいない。私すらいないのだ。何もないはずなのに、何かある。そんな不思議な世界が私はとても恐ろしい。
見えない未来へ
進路を決めるのは苦痛でしかなかった。親に相談しても自分で考えろと言われる。日が経つごとに心の苦痛は大きくなっていく。
自分の学力は本当に通用するのか不安で仕方がないし、偏差値を調べるのが恐ろしくて勇気が出ない。
学校を見に行くのでさえ誰かについてきてほしい。一人じゃ心細いから。
でもどうだろう。何とかなると自分に言い聞かせて暮らしていたら、だいたいはどうにでもなる。親がそう言ってくれた。少し肩の荷が軽くなった気分だ。今の生活はその言葉で成り立っている。未来に進むのが何か楽しみだと思えるようになった。
吹き抜ける風
この日、一人息子が旅立った。列車に乗り込んだ息子が窓から手を振っている。思わず振り返してしまい、また帰って来るのだと必死に自分に言い聞かせる。
列車が発車し、加速していく。息子がどんどん遠ざかって見えなくなる。
列車のせいで風が吹き抜ける。肩まで下ろした髪の毛が乱れてしまう。この乱れた髪を整える気も起きなかった。今の私の気持ちはこの髪と同じように乱れている。
大切な息子が無事に帰って来ると言い聞かせて髪を整える。もう既に風は止んでいた。
冬へ
冬に向けての大掃除。
落ち葉をかき分け、寝床を作る。
秋の間にどんぐり集めて。
土の中はポカポカと湿って。
次の朝日を拝むまでの永い眠り。
寒さとの戦いはこれから始まる。