誰もいない教室
小学生のころ、学校に忘れ物をして夜の6時ごろに取りに行ったことがある。
職員室には人はいたような気がするが、何か寂しげだった。人がほとんどいなかったからかもしれない。しかし、教師というものはもっと遅くまでいるイメージを持っていたから、少し不自然に感じた。
職員室を抜けて階段を登ると、何か水が滴るような音が聞こえてきた。そのとき、友達が話していた怪談話を思い出し、さらに怖くなった。考えるな!考えるな!そんなことを考えたところで意味はない。と、必死に自分に言い聞かせて歩いた。
私の教室は3階にあったため、さらに気が遠くなった。階段を登りきるころには息が切れていた。いつもならこんなに激しく呼吸なんてしなかった。きっと、夜の教室のせいだ。そう文句を言いつつ教室に入った。人がいるとは思っていなかったが、やはり静かだった。何だかモスキートーンのような音が聞こえていた気もするし。
今の私には、その時何を忘れたのかは覚えていない。しかし、ロッカーの中にあったことは覚えている。自分のロッカーをあさっても忘れ物はなかった。だったら、隣だろうと推理し、まず右隣のロッカーをあさった。明日、ちゃんと謝らなければと思う暇など、その時にはなかった。もう早く帰りたい一心で。
その夜の学校の恐怖で、何を忘れたのか、結局見つけられたのか、恥ずかしいが今では覚えていない。しかし、誰もいない教室の恐怖は鮮明に覚えている。次の日の登校は少しためらった。そんな記憶もまだ残っている。
もう、夜の教室はこりごりだ。何かが本当に出そうで怖い。周りをキョロキョロせずにはいられない。それ以来、もう夜の教室には絶対に行かないことにしている。忘れ物があっても、絶対に!
9/7/2025, 12:04:22 AM