『待ってて』
その言葉を聞くと胸が苦しくなる。
その言葉を最後に、母親とは一度も会っていない。
それ以来僕は、人を信じられない。
信じて裏切られるのが怖いのだ。
『洋介くん、ここで待っててくれるかな?』
『……』
形だけでも声を出さなければならないのに、声が出なかった。
怖くてたまらず、今すぐにでも逃げ出したいと思う。
なんとか首を縦に振ったが、職員の顔は見れなかった。
そんな日常をずっと過ごした結果、社会の歯車からもはみ出てしまう、そんな人生が始まったのだ。
何十年とも続く、地獄のような日々が。
『待ってて』
その言葉は、僕にとって地獄の言葉だ。
あなたに伝えたい、この気持ち。
あなたが好きだという感情。
ずっと隠れていた私の感情。
あ、早く早く私だけの人になってほしい。
そんな気持ちで、脳が狂いそうだ。
『ごめんね体育館裏に呼び出しちゃって。あなたのことが好き、付き合ってください』
『ごめんなさい。他に好きな人がいるだよね』
伝えたいことは、伝えたのになぜなの。
何故私は、こんなにも冷たい気持ちにならなくては行けないの。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
その後、ショックのあまり私は倒れ、倒れた場所が悪かったのか打ちどころが悪くそのまま亡くなったのであった。
この場所で出会ったのを覚えていますか?
丘の上にある桜の木。桜が咲きほこる季節、あなたと出会った。
そして、そこで死にゆく彼女は桜のように綺麗だ。
そして僕は、警察に捕まったのだ。
この場所で出会ったのを覚えていますか?
丘の上にある桜の木。桜が咲きほこる季節、あなたと出会った。
そして、そこで死にゆく彼女は桜のように綺麗だ。
そして僕は、警察に捕まったのだ。
誰もがみんな社会で生きている。
だが忘れないでほしい。その歯車から跳ね除けられた人たちがいることを。