『待ってて』
その言葉を聞くと胸が苦しくなる。
その言葉を最後に、母親とは一度も会っていない。
それ以来僕は、人を信じられない。
信じて裏切られるのが怖いのだ。
『洋介くん、ここで待っててくれるかな?』
『……』
形だけでも声を出さなければならないのに、声が出なかった。
怖くてたまらず、今すぐにでも逃げ出したいと思う。
なんとか首を縦に振ったが、職員の顔は見れなかった。
そんな日常をずっと過ごした結果、社会の歯車からもはみ出てしまう、そんな人生が始まったのだ。
何十年とも続く、地獄のような日々が。
『待ってて』
その言葉は、僕にとって地獄の言葉だ。
2/13/2024, 10:55:17 AM