‐世界の終わりにキミと‐
ツンドラ
凍てつく凍原
作法厳しき氷の女王
恐れを知らず
無謀に胸元踏みいる旅人
人はそれを勇気と言わぬよ
此方へおいで寂しかろう
此処へおいで不安だろう
彼女が囁く風が吹く
彼女が手招く雪が降る
ポラリス
見上げた北極星
煌めきたるは彼女の瞳
おいでやおいで
抱いてやろうて
おいでやおいで
永遠をやろうて
永遠の約束冷たき唇
美しきまま此処に棲まえや
わたしと共に
氷の微笑み
溺れてしまえよ此の夜に
謳い揺れているよ
大いなる世界樹ユグドラシル
世界を支える樹の下で
もう離さない
お休みなさいな
永遠の誘い
‐最惡‐
部屋のソファで足投げ出して
頬杖ついて退屈してる
“ご主人樣”と
飼ひ慣らされる
數字の異形ら
全てが毒し冒されて
何も麻痺して感じない
儀式のやうに仰々しく
豪奢なグラスに
アブサン注いで
角砂糖のせ火を附けよ
指さし目配せ指圖する
ゆらゆら搖れる青い炎
牀から這ひ上がり
纏はり附く蛇
抽出される
呪ひの植物苦ヨモギ
啼き交はしてゐる
つがひの鸚鵡
纏わせられた花言葉
“此の世に存在しない”
眞晝の月よ
夜中の太陽
羊の瞳
横長瞳孔
黒い流し目
撃ち墮として
此の世から
拐かしてしまはう
永遠に
‐誰にも言えない秘密‐
日曜の魔法
夢のやうに
刻は過ぎ
小雨降るなか
鐘は鳴る
かけ降り乍ら
振り向き乍ら
午前零時の
記憶喪失
‐狭い部屋‐
瞳のレンズの向かふ側
泡の上がる水音と
靜かに泳ぐわたしの古代魚
水槽前で照らされ乍ら
ミルクマグを兩手に抱へ
ぼんやり口開け眺める
年下のキミ
華奢で細いなで肩が
ダレた襟首から零れてる
白い肩に咬みついて
紅い痕を殘したら
困るだらうと意地惡したら
振り返らずに首を傾け
ココにもしてよと
要求してくる
クスクス笑ひで一枚上手
學校サボつて
いつも入り滲つてる
年下のキミ
‐これは失恋の物語、始まりは…‐
廻轉琴が掻き鳴らされる
廻る廻る運命の輪
給水塔を遙か越えて
共に作つたペンシルロケット
いつかあの星に行かうと
約束をした左の小指
こどもの約束夜空を越えて
あなたは獨り星に成つた
洋琴を奏で屆けるやうに
キーボードを叩いて彈いて
あなたが曲を奏でるやうに
わたしが謳つてあなたに傳へる
あなたはわたしの廻轉琴
わたしはあなたの自動書紀
國立博物館で待つてゐて
黒鐵天象機で夢を描いて
素敵な夜で終わりませう
眞鍮のトートロンの前で待つてゐて
雙葉鈴木龍の化石の前で待つてるわ