「今日は一緒に帰るんだからね」
「…うん」
「アイス、一緒に食べに行くんだからね」
「…わかってるよ」
「教室で待っててよ!迎えに行くからね!」
最後にぎゅっと手を強く強く握って、彼女はふたつ隣の教室に走っていく。昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴るなか、自分の教室に入るでもなくその姿を見送っているとふいに彼女が振り返った。
「また放課後ね!」
念を押すように言われて、なんだか笑ってしまう。前みたいに早退、出来なくなったなぁ。
"君と出逢って"
遠くでバイクのエンジン音が聞こえた気がして、ふと外に意識が向く。いや、バイクが走ってること自体は珍しくないけれど、近付いてくる音がどうにも聞き覚えがあるような気がしてならなかった。
瞬間、ぴんぽんとスマホがメッセージを受信した音を立てる。
『まだ起きてる?』
届いたそれにハッとしてカーテンを開けて窓を覗く。家の前にいる人影を見たその瞬間、画面がメッセージから電話に切り替わった。慌てて通話を押せば、時間帯を気にした絞られた笑い声がくつくつ聞こえる。
「急にごめん、どうしても会いたくて…。ね、ちょっとだけ抜けて来られない?」
電話口の台詞と同じように、彼がひらひらと2階にいる私に手を振った。
"耳を澄ますと"
あそこで教師に全速力で追いかけられているヤンキーは、出会った幼稚園の頃から高校生の今もずっと変わらず私のことを名前にちゃん付けで呼んでいる。
"二人だけの秘密"
「お前、何大きな声を出しているんです」
ぎゃんぎゃん声をあげていた女の腕を掴んだ彼に、あっと声が出た。彼にも聞こえたらしくそこでようやく私たちに気付いてにこりと笑みを浮かべる。
「失礼しました、皆さん怖かったでしょう」
「うん、怖かった…」
「来てくれてありがとう…」
「どうしようって思ってたの…」
「はァ!?かまととぶってんじゃねーし!言っとくけど、幼馴染みだからって調子乗んなって先に喧嘩売ってきたのあいつらだからね!」
いまだにぎゃんぎゃん騒ぐあの女にハイハイとおざなりに返しながら「それでは、失礼します」と私たちには柔和な笑みで丁寧に頭を下げて、彼は去っていく。あの女の腕をしっかり引いて。
それをぼんやり見送っていると、あの女が振り返って私たちに中指を立てた。やっぱ許せねえよあの女。
"優しくしないで"
「何色から色とりどりっていうと思う?」
「虹が七色だからその辺りからじゃない」
「成る程…じゃあ花屋で困ったように笑ってた人は最終的に花を7種にまで絞ったと仮定しようかな」
「世界に一つだけの花の考察してる感じ?」
"カラフル"