13分前

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 遠くでバイクのエンジン音が聞こえた気がして、ふと外に意識が向く。いや、バイクが走ってること自体は珍しくないけれど、近付いてくる音がどうにも聞き覚えがあるような気がしてならなかった。
 瞬間、ぴんぽんとスマホがメッセージを受信した音を立てる。
『まだ起きてる?』
 届いたそれにハッとしてカーテンを開けて窓を覗く。家の前にいる人影を見たその瞬間、画面がメッセージから電話に切り替わった。慌てて通話を押せば、時間帯を気にした絞られた笑い声がくつくつ聞こえる。
「急にごめん、どうしても会いたくて…。ね、ちょっとだけ抜けて来られない?」
 電話口の台詞と同じように、彼がひらひらと2階にいる私に手を振った。


"耳を澄ますと"

5/4/2024, 1:13:07 PM