「あなたが、人狼なのではないですか?」
うっすら微笑んで、そう一言落とされた。それだけ、ただのそれだけで周囲の目が一変する。ずっと怪しいと思っていた、あの時あそこでなにを、と確証のない曖昧な言葉を口々に投げつけられ最早どうしようもなく俯く。証拠は何一つない。けれど、最早弁解したところで無意味だ。
彼女に疑われた時点で、今日ここからいなくなるのは自分であると決定したのだから。
"たとえ間違いだったとしても"
「涙って何で泣いてるかによって味が違うんだって」
「へえ、そうなんだ」
「確かめてみる?」
「もしかして私今何らかの方法で泣かされようとしてる?」
"雫"
あなた以外何もいらないというのは本当なんだけど、あなたとどこか行くのにオシャレな服がほしいし、一緒に歩くのには素敵な靴がほしいし、あなたと美味しいものも食べたいし、それにはどうしたってお金もいるし、あなた以外にも必要なものはたくさんあって、だから、だから、ああ、ねえ、どうしよう!
そう言ったら「大事なものはいくつあったっていいんだよ」と笑われた。
"何もいらない"
「もしも未来を見られるならって考えたことあります?」
「ときメモの喫茶店会話みてえな質問するじゃん」
「男女の友情ってあるんですね…」
「しかも俺今親友ルート入ってんの?」
「ふふっ!それで、考えたことは?」
「ないな。見られるなら見るけど見られないし」
「現実主義ですね」
「まあでも、本当に見られるなら…」
「見られるなら?」
「卒業した後もお前とこうして駄弁ってるかを見るかな」
「先輩…」
「やったね、バッチリ好印象!!!」
「いや、そこまでじゃないです」
"もしも未来を見れるなら"
「世界に色がついた瞬間ってある?」
「ええ?あー、まあ…そんな大層なのはないけど、いつも通りの景色がぱっと明るくなったような気がした瞬間ならある」
「へえ!ちなみにいつなのかお聞きしても?」
うきうきと身を乗り出せば、彼はするりとポケットからスマホを取り出した。写真なのだろうかと待っていると、存外すぐに画面が差し出されて覗き込む。
すると、そこにはよろしく!とキャラクターが頭を下げる見覚えがあるスタンプがあった。というか、見覚えがあるもなにも私と彼のトーク画面である。はて、と首を傾げれば見ていた彼がおかしそうに笑った。
「お前が初めてLINEくれた時」
"無色の世界"