誰も彼も目を向けない無用の長物
55階から身を投げたくなるほど
腐った中身を混ぜ グチャグチャにしたい
そっぽ向いても 刺し殺しに来る
今日の命を讃えて明日の斬首を待った
行けない!行けない!どこへも行けない!
穴あく頭蓋の内気な子
蠱毒で死んだ
潰れて死んだ
クスリ飲んで死んだ
轢かれて死んだ
鉄骨落ちて死んだ
赤ウサギの亡霊が休むことなく反復横飛び
地底エビのリーダーが仰け反りながら盆踊り
バカみたい
星を呑む様に 偉大なる故人の夢
目の毒だと継子が見せぬ
極彩色にゆめゆめ語らう
手も足の如く くだらぬ事を吐くゆえに
吊りロープにはチェーンの床、
軋むベッドには縊死と縺れる情
得るか 棄てるか 抗うか
この世は摩訶不思議
無数の腕がおまえを掴む
まるで我が子を抱き締めるように
私の知らない顔を知るように
おまえが冷めた飯をかきこむ頃には
人々が心をそこに 捨ててゆく
愛すものには罪がないのに …
今日 窓に黒い影はへばり付いていない
耳が遠くなる 足も 自然と遠く
分厚い天文学の辞書 表紙を撫でる
もう何も知りたくない
私は、彼の脳が月に盗られてしまわないか心配で眠れない。
彼は本当にうつくしいから、月の神が私から遠ざけてしまうのだ。彼の、心も、その夜の夢も。
彼の為の罠など月の前では腐りかけた洋梨と変わらない。
真の白昼夢が甦るのはこの夜でも、月の監視下にある額の膿の中でもなく、彼をいちばん愛する月たる私の腕の中でもなかった。未来永劫など衆目に晒されたところで末路が変わるはずもなかった。彼は本当に夢の中。彼は本当の夢の中。
目の前で堕ちた、一昨日を二年半後に知らせに来る白鷺は、月に辿り着けずに未来に死んだ。
私に見栄を張る朧雲など気にも留めないが、あの死は実に有意義な来るべき日を示し、彼を抱いて逃げてゆく。気に病み追うことも憚られる月のなかの私は彼の邪な心に住む、まるでhom-whiotの逆さに生えた羽の様に!
暗く燃えた蟹の屋敷には男が住む。女が住む。子供が住む。月は話せなくなる。
あれはおまえが望むもの
総ては日が沈む浦に
おまえの望むままに