Void of Death

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私は、彼の脳が月に盗られてしまわないか心配で眠れない。
彼は本当にうつくしいから、月の神が私から遠ざけてしまうのだ。彼の、心も、その夜の夢も。
彼の為の罠など月の前では腐りかけた洋梨と変わらない。
真の白昼夢が甦るのはこの夜でも、月の監視下にある額の膿の中でもなく、彼をいちばん愛する月たる私の腕の中でもなかった。未来永劫など衆目に晒されたところで末路が変わるはずもなかった。彼は本当に夢の中。彼は本当の夢の中。
目の前で堕ちた、一昨日を二年半後に知らせに来る白鷺は、月に辿り着けずに未来に死んだ。
私に見栄を張る朧雲など気にも留めないが、あの死は実に有意義な来るべき日を示し、彼を抱いて逃げてゆく。気に病み追うことも憚られる月のなかの私は彼の邪な心に住む、まるでhom-whiotの逆さに生えた羽の様に!
暗く燃えた蟹の屋敷には男が住む。女が住む。子供が住む。月は話せなくなる。


あれはおまえが望むもの
総ては日が沈む浦に
おまえの望むままに


3/8/2023, 8:49:11 AM