遠い日の記憶。それは、夏の夕暮れに友達と笑い合ったあの瞬間。風に揺れる木々の音や、蝉の鳴き声が今でも耳に残っている。時が経っても、心の奥底で色褪せることなく輝いている。
お題『遠い日の記憶』
それは、本当に突然の別れだった。
君が死ぬなんて思ってなくて、何が起きたのか分からなかった。ただずっと呆然としていて、時間も忘れていた。しばらく経ちやっと理解を始めようとしたが、それを拒むように頭痛がして吐きそうになる。こんなことを経験したことなんてなかったし、したくもなかった。
君がもし死ぬと分かっていたなら覚悟を決めたし、ここまで苦しむことはなかったかもしれない。いや、それは流石に強がりか。
もっと、君と話をしたかった。君について教えて欲しかったし、僕のことも話したかった。あのとき、君の秘密を後で教えてくれると言っていたじゃないか。あの約束はどうしたんだよ。
僕と話をするときに見せてくれたあの天使のような笑顔はもう見ることができない。目を瞑ったまま動かない君をいくら見てもあの笑顔はどこにもない。もしかしたら何事も無かったのかのように目を覚ますんじゃないか、というありえない思考まで浮かぶようになり、君から目が離せない。
1秒でもいいから、目を覚ましてほしい。あの2文字を君に伝えるのは、それで十分だから。
お題『突然の別れ』
私は、真夜中が好きだ。暗くて、何も見えなくなるから。何も見えなくなって、自分のことがよく分からなくなるから。
夜眠れないとき、自分の死について考えてしまうことがよくあると思う。死んだらどうなるのか、天国は本当にあるのか、とか...
私もそうで、今までは怖くて余計に眠れなくなっていたのだが、最近はこの考えるという行動自体が好きになっていた。そして、怖さがいつの間にか消えていた。
どうして好きになったのかは分からない。毎日のように無意識に考えてしまうから慣れたのか、それとも"死"という概念が現実逃避に向いていたからなのか。どちらにしろ、今の私には考える行為が生きているという証明になっているのは間違いない。だから、少なくとも"本当の私"が見つかるまでは考え続けようと思う。まぁ見つけてくれる人なんていないだろうけどね。
とりあえず、今の私が考えるべきなのは考えることができる理由だ。それが分からないと今の状況では何もできない。
そんなことを考えていると、朝日が射していることに気がついた。
朝が来てほしくないという私の思いは届かず、何も見えなかった世界が段々と明るくなっていく。
よく分からなくなっていた自分のことも、はっきりと自覚させられる。
「だから朝は嫌いなんだよな...」
実体のない、透けた体を見ながら私はそう呟いた。
お題『真夜中』