【子供のままで】7
家に帰ると「おかえり」と声がする
ご飯があって、暖かい風呂もある
寝室へ行くと畳まれた寝具
おやすみと言ってくれる母と父
僕はもう大人になってしまった
家に帰っても誰もいない
コンビニで買った弁当
風呂は面倒臭いからシャワーで
寝具は起きた時と全く変わらない姿
母は死に父は認知症
子供のままで居たかった。
大人になんてならなくて良かった。
しかし過去には戻れない。
でも未来は変えられる。
一から立て直そう。
大人もいいもんだと思えるように
【愛を叫ぶ。】6
「好きです」
「愛しています」
「結婚しよう」
「幸せを共に歩もう」
「きみの全てが欲しい」
愛の言葉には全てYESと答えた。
愛されていることに不満はなかった。
ただ全ての愛は私にとって 一瞬に過ぎない。
永遠の命を持つ私は何千、何万と恋をした。
その同じ数だけ別れも経験した。
別れがある愛に疲れてしまった
「いっそ自殺でもしようかしら」
ぼそっと言った言葉が彼に聞こえてしまった。
「なんてこと言うんですか!」
あぁまだ永遠の命のことを言ってなかったわ。
なんて説明しようかしら…
「僕がいる限りそんなことはもう言わせません。
それに死ぬ時は一緒です」
深呼吸をする
「ありがとう。愛しているわ」
【モンシロチョウ】5
姉はまるでモンシロチョウ。
カワイイとか小さいって意味じゃない。
アブラナ科の植物を食べる害虫。
あーあいつが憎たらしい。
毎日毎日わらっててさ。
自慢のつもり?
ホント害虫だよね。
どうせ陰キャで馬鹿でトロい私に見せつけてんでしょ。
性格わる。
姉は容姿学力人脈財力
全てが私より優っている。
もちろん運動神経もいい。
そりゃあもうモテまくり。
どうせ幸せだったんでしょうね。
それなのに、、、
私よりずっと幸せなのに
それなのになんで死んじゃったの?
私を置いていかないでよ。
お姉ちゃん今までごめんね
【忘れられない、いつまでも】4
ぼくはねサンタさんにおねがいしたの。
どんなおねがいかはひみつ!
24にちのよる、ぼくはわるいこだからおきてたの
それでねあけてたまどからサンタさんがきてくれたの
よふかししたのにサンタさんぼくのことおこらなかった!
さいこうのプレゼントをあげるってサンタさんがいってくれた。
ぱぱとままがねるへやをきかれたからあんないしてあげたよ!
ぼくすごいでしょ!
サンタさんのまほうでぱぱとままもサンタさんみたいにまっかになったよ。
きれいだね。
サンタさんはぼくに「次はお前だ」っていってきたの。
うーん。あ、わかった!ぼくがサンタさんになるってことだよね!
まかせて!
ぜんしんまっくろなサンタさんなんておかしいよね。
ぼくがまっかにしてあげる!
こんなさいこうのいちにちわすれられないよ!
ありがとう、サンタさん
【一年後】3
俺が生まれ育った集落には古くからある風習がある。
19歳になる誕生日の夜、集落の奥に祀られている「お鏡さま」にお告げを頂くのだ。
そして俺は今日19になる。今まで大人たちに聞いてもお鏡さまやお告げについて聞いても教えてくれる人はいない。その時になったらぁ分かる。そういうばかりだ。
そんなことはもうどうでもいいんだ。だって今から自分の目で確認してやるんだからな。
俺はわくわくしながら「お鏡さま」の元へ向かう。
道中、隣の家のおじさんと村長に出会した。ダムを作るとかなんとかで県の人が立ち退きを相談してきたそうだ。生まれ育った場所だ。立ち退きなんて嫌だと言うとおじさん達は笑って「ありがとう」と言ってくれた。そのあとなんだか難しい話が始まったから俺はまた足を動き始めた。
集落の中心部と違い不気味なほど静かだ。辺りを見回すと2mはありそうな大きな鏡があった。
これが「お鏡さま」だろうか。とりあえず俺は教わった通り言葉を唱える。
「お鏡さま、お鏡さま。どうか向後をお教え下さい」
…所詮ただの言い伝えかよ、馬鹿馬鹿しいな
「頼む、みんなを救ってくれ」
確かにそう聞こえた。俺以外この場所に居ないのに。
どういう意味なんだ?俺の未来に何かあるのか?みんなとは村のみんなのことか?
分からないことが多すぎる。
空耳…だよな。気にする必要ない。
――――――
《ここで速報です》
お鏡村で大規模な土砂災害発生しました。
お鏡村ではダム建設が進んでおり現在関連を調べているとのことです。
みんな死んだ。土砂に巻き込まれて。俺だけ生き残ってしまった。
どうすればいい。誰も何も無い。
ふと「お鏡さま」が目に入った。傷は付いているが無事なようだ。
頼れるものがこんな物しか無いなんて。
思考とは裏腹に体は動いた。
「神様、頼む、みんなを救ってくれ」