【初恋の日】2
「はじめまして」
清々しい挨拶。呑気な顔。
今日から同室になる彼だが、印象は悪かった。
私含めここには、病気や怪我と戦っている人達が大勢いる。
彼も同様に戦っている。
病気なんて気にしていないような顔をする彼に
心底嫌気がした。
元々四人部屋だが部屋には私と彼しか居ない。
だからか彼はしつこく話しかけてくる。
返事を求められることも無く彼の独り言を黙って聞く。
話の中で彼がずっとこの病院にいること、
難病であと2年生きれるかどうかということが分かった。
そんなこと言われたら、私も黙っておくわけにも行かない。
しかし難病の彼に私なんかの話をしたら彼はきっと私を嫌うだろう。
一応同室なんだから嫌われると都合が悪い。
とりあえず天気の話をしておいた。
その日から彼とはたわいもない会話をするようになった。
毎日そんな日が続くと思っていた。
ある日朝起きると彼はいなかった。
手汗がジワッとする。
心臓の音が激しくなる。
話によると昨日の夜廊下で倒れていたらしい。
先程検査を終えもうすぐ戻ってくるとのこと。
あぁ、よかった。死んでしまったかと思ったから。
彼が戻ってきた。
「どうしたの?目赤いよ?」
「なんでもないよ」
私はようやく確信した。彼が好きだ。
伝えるつもりは無い。ただこの毎日がずっと続いてくれればそれでいい。
【明日世界がなくなるとしたら、何を願おう】 1
僕にとって家族ほど恨むものは無い。
毎日浴びせられる暴言、暴力。
最近は稼いだバイト代まで奪われるようになった。
ある日新型のウイルスが発見された。
ゆっくり、しかし確実に蔓延していった。
致死率が99.3%だったため人々はそれを「神からの天罰」と呼んだ。
殺人。暴力。強姦。差別。戦争。
様々なことを犯してきた人類にとって当然の結果と言えるだろう。
僕の住む日本にも感染者が出るようになった。
政治家や著名人。友達。
たくさんの人が消えていった。
両親は早い段階で天罰を受けた。
数日間苦しみ涎を垂らしながら消えていった。
僕にも天罰は下った。
どうせ死ぬんだ。わざわざ治療する必要なんてない。
僕は病院ではなく家で死ぬことを選んだ。
なんとか数日間耐えたが明日を迎えることはきっと出来ないだろう。
もうほとんど手足の感覚がない。目も霞む。
あぁ僕は死ぬのか。心残りなんてないけど何だか変な気分だ。
そうだな、最後くらいわがままを言おう。
━━━━来世は誰かに愛されたい。