【逃げられない呪縛】12
俺は産まれた時から人生が決まっている。
父親が殺人犯だから。
写真なんてあるわけないし俺が小さかった時に
死んだらしいから顔は分からない。
母は女手1つで俺を育ててくれた。
父が人を殺してしまった町からは とっくに引越しているが
ポストに罵詈雑言が書かれた手紙や家への落書きなど散々な目にあっていた。
それでも母は優しく笑顔で俺を育ててくれたから
少しはまともな大人になることが出来た。
母も歳をとり働くのがきつくなってきた。
今は俺が工場で働きながら養っている。
俺は犯罪者の息子として顔が割れてるから
飲食店などでは内定がなかなか貰えなかった。
ようやく働けたのが今の工場って訳だ。
父が誰をどう殺したかなんて知らないし知りたくもない。
でも母や俺がまともに暮らせなくなったことは
絶対に許さない。
一生まとわりついてくるこの呪縛に俺は抗い続ける。
【突然の別れ】11
ネットを使うようになり私の交友関係はとても広がった。
趣味が合う人、住んでいる地域が近い人、同年代、
匿名で顔も声も教えない限り分からない。
だから私はたくさんの人に声をかけた。
彼との出会いも私から声をかけ始まった。
同世代で趣味も近かったためすぐ仲良くなった。
出会って3ヶ月ほどで私から告白した。
彼からの返事は遅く既読が付いてからしばらく経っていた。
「ごめんなさい」
理由を聞こうかと思ったけど辞めた。
なんて返そうか悩みながら
「分かった。正直に言ってくれてありがとう」
と返した。既読はついてたけど返信は無い。
1時間後、私から
「これからも友達でいてくれる?」
と送った。既読は付かない。
既読が付いてないか、返信は来てないか
5分ごとに確認する。
5分、10分、1時間、6時間、1日
段々と確認の間隔は広くなっていった。
ブロックされたのだろうか
数日前まであんなに楽しく話していたのに。
後悔してももう遅いことは分かってる。
でもこのままだと私は前に進めない。
気持ちに区切りを付けるため、
私は彼をブロックした。
【真夜中】10
夜が好き
静かで自分の世界で過ごせるから。
私の敵は誰もいない。
スマホを開く。
通知がたくさん。
どの人も私の味方。
似たような言葉ばかりだけど
それでも嬉しい。
太陽が昇ると味方は消える。
その代わりみんな敵になるんだ。
朝が来るのが怖い。
このまま夜が続けばいいのに。
時を止められたらいいのに。
窓を開けベランダに出る。
あー星がきれい。風も気持ちいいな。
【愛があれば何でもできる?】9
重力や磁力、風力
他にも戦力圧力握力眼力。
この世には「力」がたくさんあり、
力を持つ者は強く尊敬され恐れられる。
しかし最も強く美しい力は「愛」だ。
どんな壁の前にも愛の力は最強だ。
自分愛するものの為なら殺しも盗みも何でもする。
今までずっとそうしてきた。
君が望むものは手に入れたし、
嫌うものは排除してきた。
なのにどうして?
こんなにも愛しているのに、、
拒まないでよ。好きなんだ。
君のこと。
愛の力は最強。
君の為ならナンデモするよ。
【風に身をまかせ】8
貯めたお金で買った車にまとめた荷物を積む。
思っていたより少なく済んだ。
荷物は、、、当分暮らせそうなお金と着心地いいジャージ、ちょっと破けてる傘。
それと細々したやつ。まあこれだけあれば何とかなると思う。
もう疲れてしまった。
朝早く起きるのも、仕事するのも、興味の欠片もない話をさぞ興味深そうに聞くのも、
目上にしっぽ振って過ごすのも、明日の憂鬱のことを考えながら寝るのも
全部全部疲れてしまった。
だから逃げることにした。
辛い現実から。現実逃避とでも言うのだろうか。
そんなことを考えながら車の運転席に乗り込む。
目的地なんてない旅が今日始まる。