「雪を待つ」
真っ白い雪が何もかも覆い隠す
沢山の色は1色に、鮮やかな色はモノトーンに。
暖色は寒色に。
気温も色までも寒さを感じる。
寂しさも混じった、切ない色。
雪は全てを隠してしまいそうな気がする。
何もかも見えなくなって、何もかも消えてしまいそうな。
それが悲しくて、切なくて。
それなのに、そう思うのに。
どこかで自分も雪を望んでいる。
自分も雪に溶け込んでしまいたくなる。
覆い隠して、消して、溶かして。
何もかも白紙にして欲しくて、けれど雪を待つ私の顔は
涙で濡れていた。
「イルミネーション」
静寂と漆黒に包まれる夜に輝く光は一層際立って見えるものだ。
それがあまたの灯火ともなれば、美しくないはずがない。
灯火があるだけで、暗闇は美しく輝く。
自然から発せられる光とはまた別の美しさを持っているそれらは、色鮮やかに暗闇を彩る。
闇夜に輝く光は夜の美しさを語ってくれているよう
暗闇だからこそ、目に留まり、心を魅了する美しさを出せるのだ。
光は希望を連想させる。
あまたの光は、あまたの希望。
あまたの希望は、勇気を与え、心を暖める。
光にはその力がある。そう、思う。
闇もまた、光を際立たせる為になくてはならない存在である。
闇があるから、光を美しいと、暖かいと、貴重だと想えるのだ。
闇ありて光輝く。
「愛を注いで」
濁ったガラス瓶に甘いカクテルが注がれると
たちまち色は澄んでいき、ピンクやオレンジといった暖色に染まっていく。
注がれた液体は特別なものだった。
通常、新たな色が増える度、色は混ざり濁っていく。
瓶の液体は常に色々な色の様々な液体が注がれている。
それは留まることを知らない。
沢山の液体が注がれれば注がれるほどいろは混じり、瓶は汚れていく。
しかし、それもあのカクテルが注がれるだけで
汚れは落ち、瓶は暖かな色に染まっていく。
それは、そのカクテルだけが持つ特別な力である。
そのカクテルはお金で買うことができない。
手に入れることが難しい貴重なカクテル。
そのカクテルは贈られる人の為に1から作られるオーダーメイド品である。
味も色味も毎回変わるオリジナルで、そのカクテルには送る人の心が入っている。
それは他の誰にでもないその人の為のカクテル。
そのカクテルの名は、「愛のカクテル」
「逆さま」
どんなに精巧な機械も
正常に機能しないこともある
異常をきたすことも、故障することだってありうる。
完璧なんて、絶対なんて、この世に存在しないのではないか。そんな気さえしてくる。
当たり前と思っていることも、日常だと思っていることも大きな勘違いで、機械でいうところの歯車が1つ狂えば、全てに異常をきたす。
一つ一つの歯車が正常に作動しているからこそ
当たり前を実現できている
歯車にも寿命がある。
寿命が近づくにつれ、少しづつ錆び、壊れていく。
人の寿命もまた等しく。としを重ねるにつれ身体機能の低下、物忘れなどの症状が出てくる。
そしてやがては命が散ってしまう。
しかし、それは平等に訪れるものでは無い。
個人差があり、早く来る人もいれば遅く来る人もいる。
中には親より先にその命を散らしてしまう人もいる。
機械も同じように、古い歯車より先に新しい歯車が壊れてしまうこともある。
そう、この世の中は当たり前で、正常に動いているように見えて、狂っている。
所々、逆さまなのだ。
正確に見えて所々、狂っている。狂っているからこそ全体のバランスが取れているようにも思えた。
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補足
(逆さま→正常に動いていないという意味
また逆さまには親より先に子がなくなってしまうという意味も含まれているそうです)
「眠れないほど」
夜も眠れないほど、頭の中はあの日のことでいっぱい。
あの日のことが頭から離れない
忘れたくても、忘れられず
毎晩、毎晩、蘇ってくる
あの日の音、声、場所、人、全てが蘇ってくる
全てが頭の中でこだまする。
あの日の全ての記憶が私を蝕んでいく。
私を傷つける、私を侵食していく。
呼吸も苦しくなり、傷は深くなる。
その後、身動きが取れなくなり、
そしていつか飲み込まれてしまうだろう。
それまでは眠れない夜が続くだろう。
その後で永遠の眠りにつくのだろうか。
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