六日目 ひとりきり
僕の周りにはたくさん人がいた。
それはただ、愛想良く過ごしていたからだ。皆の求める姿でいたからだ。でもそれをやめたら皆離れていった。愛想がよくないからだ。皆が求めていない、"僕"になったからだ。誰も僕を見ていなかったのだ。
僕はひとりきりだ。所詮僕はその程度なのだ。
五日目 secret love
忍ぶれど 色にでりけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで
とある昔、そんな詩を詠んだ歌人がいた。
どんなにどんなに隠していても、分かる人には分かってしまう。伝えたくても伝えられず、どうにもこうにも動けずに参っている。そんな恋を、昔の人もしていたのだと思うと少し、こそばゆく感じる。
恋はなんてやりきれない。だがこの道を通ってきた足跡は、数え切れない程にある。
この道を俺も通っていく。そう思えば、なんだか勇気が湧いてくるのだ。
四日目 ページをめくる
本を読む。それは別に嫌いというわけではないが、別段好きというわけでもない。僕にとってはただの暇つぶしというだけだ。しかし皆は僕を文学少年と誤認したままでいる。僕を正しく理解してもらう必要はないのだ。本だってそれと同じで、隅から隅まで正しく理解する必要はないのだ。
僕は本を読むのが好きなわけじゃない。文章を読むのが好きなだけだ。そう言い訳をしながらも、やはりページをめくる手は止まらない。
三日目 8月31日、午後5時
暦は「夏はもう終わりだぞ」と言っているのに、僕らはまだ夏だろうと言っている。もう晩夏だと言うのに気温はまだまだ真っ盛り。
いつか、秋を忘れてしまうのだろうか。
二日目 夏草
夏の暑さは、緑の独壇場だ。
日常の何気のない、ありふれた一つの色。いつも足元で勝手に生えている、ただの一色。
そんな一色が、爛々とした太陽の元では一番星として煌めき始める。靴に踏まれた小さな一色すらもが輝いているのだ。
そんな緑が、僕は好きなのだ。