笠を被った月を見る
星を薄く溶かして
夜を淡く和らげる
涼しげな宙に足を浸す
怯えた意思を引き揚げる
雨を待つ
甘く張り詰めた皮を食む
渇いた喉に泡を継ぎ足す
柔肌にを爪を立てる
指の腹が背を掻く
胎を食い破り孵化をする
頸を晒して夢をみる
お題【今日だけ許して】
タイトル【沙羅双樹】
あの日貴方と交わって
数多の命を手に包み
全てを運命に捧ぐと誓う
この茨の道を掻き分けて行く
あの日貴方と交わって
欠片も遺さず昊へと還る
先逝く人に巡り逢うまで
夜明けの果てに
願いの先に
希う世が訪れるまで
お題【時計の針が重なって】
タイトル【産声】
それは始まりの合図
憧れは衝動に 夢は現実に
輝かしい未来は手の中に
君の背を追い続けた先
君を追い越した先の頂
それは自壊の合図
賞賛は焦燥に 輝きは朧気に
追い求めた未来は束の間の夢
遙か遠い君の背に晴れ
這い蹲り藻掻く芥に雨
それは踏み出す合図
勇気は始まりに 仲間は導に
叶えたい未来は機会を待ち望む
結末に笑顔は絶えず
祈りはいつの日も力となる
お題【red,green,blue】
タイトル【旅路】
潰れた喉が汚く喘ぎ
ただの大きな肉塊は
雲一つ無い晴天に伏す
一寸先までまだ地獄
呱々の声は何を八つ裂く
誰も知らずとも
雨は身を知る
耳元で憑く 先は淪落
やがては身罷る
此処は境
お題【雨の香り、涙の跡】
タイトル【繊翳】
やけに美しい空でした
ただただ無音で恐ろしく
私を摑んで撫ぜていた
あなたの中身は真っ黒で
美しい空に反射して
私の心も穢れていった
あの娘の指が背中を掠る
あの男の声が覆い被さって
その隙間を這い蹲って逃げ出した
あの人の眼が堪え難くて
あの子の言葉が離れなくて
逃げるように踏み出した
底なしの沼に転がり堕ちた
やけに美しい空でした
私の眼には薄汚い蝿が映っていた
幼子のように容赦なく殺した
私も死んでいた
お題【もしも君が】
タイトル【最果て】