潰れた喉が汚く喘ぎ
ただの大きな肉塊は
雲一つ無い晴天に伏す
一寸先までまだ地獄
呱々の声は何を八つ裂く
誰も知らずとも
雨は身を知る
耳元で憑く 先は淪落
やがては身罷る
此処は境
お題【雨の香り、涙の跡】
タイトル【繊翳】
やけに美しい空でした
ただただ無音で恐ろしく
私を摑んで撫ぜていた
あなたの中身は真っ黒で
美しい空に反射して
私の心も穢れていった
あの娘の指が背中を掠る
あの男の声が覆い被さって
その隙間を這い蹲って逃げ出した
あの人の眼が堪え難くて
あの子の言葉が離れなくて
逃げるように踏み出した
底なしの沼に転がり堕ちた
やけに美しい空でした
私の眼には薄汚い蝿が映っていた
幼子のように容赦なく殺した
私も死んでいた
お題【もしも君が】
タイトル【最果て】
箱の中で夢をみる
壁の外の青空
吹き込む風
壁の外の夜空
散らばる星
箱の中で夢をみる
電球の光を浴びる
夜も来ない 朝も来ない
何も変わらない箱の中
時間のわからない時計
ドアノブの無い扉
存在に押し潰される私
買って満足した本
未開封の友人からの手紙
知らない親戚のお下がりの服
何百回も繰り返し読んだ御伽噺
涙と叫びと汗と愚痴と
二度と思い出したくない思い出と
楽しかった思い出が改悪された悪夢と
未来の妄想と語った夢が染み込んだ枕
動かなくなった私
箱の中で夢をみていた
輝いていたはずの夢
塵みたいなくだらない夢
お題【七色】
タイトル【卵】
望むほど遠く
願えども叶わず
花咲く顔に曇り空
永遠に輝く罠と知らずに
縋る藁が千切れては
救いの舟すら泥舟と
異国の花は枯れて散る
永遠の煌めきに金糸雀が鳴く
お題【魔法】
タイトル【鸚鵡の語り手】
喘ぎ掠れて 死が巡る
龍は赫きを知った
始まりは終焉を知らない
太陽はいずれ沈むと
穢れに喰われた両の掌
私の瞳に喘ぎ死ぬ
死がまた攫うまで
死が優しく抱くまで
貴方の元でまた笑うまで
嗚呼、聖母 慈しみ深き其方なら
暖かき陽ノ下へ 彼を導き給へ
この身を捧ぐことになろうとも
永劫彼と逢えずとも
背の温もりを あの横顔を
私はもう知っているから
お題【そっと伝えたい】
タイトル【さらば】