記録
私の思い出の記録は紙に綴る。
悲しかったことも楽しかったこともひとつひとつ記録する。
意味なんてないかもしれない。なぜこれを始めたのかも覚えていない。
けれど、私は今日も生きていたとか私は存在してたんだとかそういう当たり前だけど当たり前ではないそれを実感できるから何となくだけど心が踊る気がする。
あなたは誰
私は人間です。
生物で、人間という種族のうちの一人です。
ロボットではないです。
感情はあります。
血も流れています。
この顔も体も全部私。
それだけ。それが私。それだけ?私ってなに?
私は人間。人間のなに?
私は私?
私は誰?
輝き
消えないようにして。その輝きが永久に続くように。
私の太陽、私の光。貴方がいないと私は生きていけない。
でも、いつか終わりが来る。それがいつ来るのかは、わからない。
こわい。いやだ。
いつか来る終わりを私はいつまで恐れていればいい?
君の声がする
ピントが合わないカメラのような視界になった。
頬に違和感を覚えたので、そこを触ってみると自分の目からこぼれ落ちた涙であることがわかった。
あれ、俺泣いてるのか?
と、自分の状態に疑問符を浮かべながら驚いていると何処からか嗚咽が聞こえてきた。
その音をたどり声の主を見つけたと思ったら、それも自分であることに言葉も出ない。
こんなになるまでの出来事かなにかあったか?
と、またもこの自分の状態に疑問符をおいた。
気付けば辺りは暗く何も見えなくなっていた。
ここは何処だろうか。
暗いのは好きじゃないんだけど。
もうなんでも良いか。ここにいれば何も考えずに済むかもしれない。
あ、何だか眠くなってき、た
?、なんかうるさい、声が聞こえる。
誰だっけ、えーとえと、ああ、あいつか。
心配性のわりには鈍感で面白くて優しい俺の……
隠された手紙
ホームルームが終わり、クラスメイトの各々が放課後の遊びの話や部活の話をしていてザワザワしている。自分は特にこの後の用事もないし、家に帰って推し活でもしようと鞄に手を掛け椅子をひいたときだった。
「ねえ、癸さん。急にごめんね、少しいい?」
「えっああうん。いいよ、どうしたの。」
「話があるの。」
確かクラスメイトの鈴花さんだったっけ。あまり話したことないけど、よく見ると顔良いなと思いつつ手招きされたので素直についていくことにした。
暫く後を追うと鈴花さんが立ち止まった場所は屋上だった。こんなところで何の話かな。
鈴花さんが照れくさそうに話し始めた。
「私、ね。…好きな人がいて、その暁くん何だけど、私、手紙を書いたのでも直接渡せなくて、癸さん、暁くんと仲良いでしょう?こんなことをお願いするのもあれだけど、
暁くんにこの手紙渡してもらえないかな?」
暁とは幼馴染みでよく一緒に遊ぶ仲だ。
こういうのは自分で手渡しするのが一番良いとこの人も分かっているのだろう。これが最善策というわけか。
「……いいよ。私から渡しておくね。きっと暁も喜ぶよ。」
「ありがとう。よろしくね。」
それを言い終えると鈴花さんは走って校舎の中へと入っていった。
こういうことは別に珍しくはなかった。
暁は眉目秀麗で文武両道。所謂才色兼備というやつと小中ともに上がってきたのでこのような役回りは結構多かったのだ。
問題はそこではなく、この手紙をどう処分するかだ。
今までだって、上手く曖昧に誤魔化してきた。
今回も無論そうするつもりだが、実は自分も暁のことが好きだからか今更ながらこんなことをするのは可哀想だと罪悪感が芽生え始めてきたのだ。
やめるつもりは一切ないが。
取り敢えずこれは、持ち帰ろう。