チャイムが響き渡る校舎
キーンコーンカーンコーン
授業開始の合図だ。
「日直号令」
その先生の言葉で日直である長谷部くんが号令をかける。
黒板にあたるチョークの音
「では(5)の問題を7分で、よーいドン」
シャーペンを走らせる音
ぴっぴっぴー
7分たったことを伝えるタイマー
今の時間は数学の授業。
数学の水野先生は…
「はい7分たったので、ではこの問題を、えぇ〜と今日は2月18日だから出席番号18番!櫻井!」
このように日付等を用いて出席番号で当ててくるタイプの先生だ。
そして櫻井は私である。
数学が大の苦手でテストもどんだけ勉強してもクラス順位は下から数えた方が早かった。
そんな私が今、公式を用いて解く計算問題の解答権を渡されてしまった。
それもまた導入問題レベルではなく応用問題レベルである。
自分のノートを見る。が、(5)と書いてあるだけで思考の成果が何も書かれていなかった。
終わった。
そもそも、どんだけ考えても結局行き着く答えは「どういうこと?」なんだよ。
数字すら書けないよ。
もう自分のできなさに胸を張りたくなるが、そんな情けないことはできないので、恥ずかしながら出したか細い声で「すみません。分からなかったです。」と答え素早く解答権を他の誰かに渡した。
「まぁ、そうだよな、」
水野先生はため息混じりで呆れていた。
私はできるだけ小さくなり1度透明になってこの場から立ち去りたい気まずさがあった。穴があったら入りたい。切実に思った。
「えぇーとじゃあ2足す18で20番 おぉ長谷部」
そう水野先生が生き生きとした声で言うと、長谷部くんは「はい」と爽やかに返事をして見せた。
彼は賢く 学年上位の成績であり、勿論数学も得意でクラス1位である。それなのにスポーツもでき、皆に優しく非の打ち所がない好青年である。
彼は黒板に丁寧且つ分かりやすく正確に途中式、答えを書き席へ戻った。心地よい春風のようだった。
勿論答えは
「おぉすごい!正解です。皆さん拍手」
クラスからは拍手と賞賛の声
そんな対応をされても長谷部くんは顔色ひとつ変えずに真剣な顔でノートを書いている。
休み時間には友達と笑顔で話、テスト前では勉強を教えてあげる姿を見る。
だから"皆のお気に入り"なんだろうな、
私は貴方が眩しいよ、
学校の登校日は残り1ヶ月を過ぎた。
大学の一般受験をひかえ猛勉強をしている友達。
推薦が決まった友達。
前よりも進学を感じさせながらも、いつも通り時が過ぎていく。
もうすぐ卒業してしまう。
楽しかった
高校生活。
ずっとこのまま…
ずっとこのままの生活が続けばいいのに…
自分に足りない何かを教えてくれる存在
愛情
それはニセモノかホンモノか疑うもの。
夏が終わり 段々と寒くなってきた。
朝は冷たく 私を鋭い光が手荒く起こす。
目覚まし時計はうるさく
1分置きにスヌーズになるようにした私が馬鹿だったと後悔したくなる。
毎日寝起きは悪い。
髪は夜のケアの意味を成さない。
シャワーを浴びる。
小窓からやわらかな光が差し込む。
お風呂場の鏡に私の裸が映る。
自分の嫌いなものほど気にしなければいけない。
年頃の女の子であると自覚する。