不完全な僕
自分が怠惰で薄情な性分だと気が付いてから、それを取り繕うように努力してきた。いい子だと思われたい気持ちのほうが強かった。子供の頃の振る舞いを思い出すと、今でも苦々しい気持ちになる。
幸いなことに多少頑張れば、おおよそのことは人並み程度の結果にはなった。大人になってからは真面目で優しいと評されることが増えたが、根本は何も変わっていないように思われる。ずっと自分には何かが欠けていると感じている。
勤勉かつ心優しい人間であるように見せかけることはできても、そもそも人を愛することが難しい。数少ない友人も結婚出産と人生のステージを進めていくのに、全くそうしたいと思えない。!
言葉はいらない、ただ…
行動で示せ
今すぐに取り掛かれ
最後まで諦めずに考え抜け
腹を括れば、どんな形であれ結果が出る
突然の君の訪問
何事も予期せぬ時に起こる。その都度、なんの準備もないままに、選択を迫られる。いま私はどうするべきなのだろうか。
数年ぶりに対峙する、変わらないようでいて確かに違う姿。どこがと問われれば定かには分からないけれど、ここで選択を間違えたらきっと、私は何かを失うことになる。それだけが分かる。それが怖くていつも何も選べないまま、選ぼうとしないまま過ごしてきた気がする。
望んでしまえば、叶わなかった時に辛い。静かにこちらを窺う視線が痛い。言うべきであろう言葉と言いたい言葉、どちらを口にするかを決めあぐねて、いつも私は間に合わなかった。何度も何度も。
今回もまた、そんな私に失望し去る背中を見送るのか?どうせどうしたって、選べなかったことや選ばなかった選択肢を振り返って後悔するのに?
何事も予期せぬ時に起こるが、思わぬ結果になることもある。準備なんかは何も整っていやしないが、整っている時のほうが少ないじゃないか。どうせいつだって間に合ってないんだから、言いたいことを伝えよう。まっすぐ目を合わせて、口を開く。
雨に佇む
張り付くような湿気が限界に達し地面に落ちる。次から次へと零れて止まない。ちょっと飲み物を買いに来ただけでスマホしか持ってこなかったので、仕方なく申し訳程度の軒下で立ち止まる。
走るか待つか、特に急ぐこともないが手持ち無沙汰な私は、決められないままぼんやりと目の前を通り過ぎる車を眺める。
毎日毎日仕事に追われて時間を過ごすうちに、それ以外のことについて考えるのが下手になった。アスファルトの匂いがする。
気になることもそうでないことも、インターネットから濁流のように得ることができる。自分で思考せずとも、それっぽい意見を流し見て考えた気になっている。自分は物事をよく考える質だと認識していたのはいつの頃までだったか。遠くで閃光が走る。
ポケットに伸ばそうとした手を止めて、暫くここにいることにした。