山羊野

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5/6/2023, 10:08:01 AM

夢も見ぬ深く安らかな眠りにつけることを。

(明日世界がなくなるとしたら、何を願おう)

4/29/2023, 11:21:24 AM

日は昇り、日は沈み、あえぎ戻り、また昇る。風は南に向かい北へ巡り、めぐり巡って吹き、風はただ巡りつつ、吹き続ける。

風と言われると昔読んだ旧約聖書コヘレトの言葉のこの部分を思い出す。変わらない繰り返し、同じところを巡り続ける世界が描かれ、冒頭の「空しい」のリフレインに続いて徒労感を感じさせる文章だが、この風の部分だけは、読んでいると自分が風の視点で方々を巡り吹き抜けるような爽快さが一瞬感じられて、それで印象に残ったのかもしれない。同じところをぐるぐる回るのは嫌いじゃない。小さい頃行った田舎の水族館(何年か前になくなってしまった)には、ドーナツ型の水槽があった。年取った大きなサメが、いつみても一定の速度でゆっくりと水槽を回っていた。水族館に行った日の夜はサメのことを考えた、サメは今もぐるぐる回っているんだろうと思いながら眠った。コヘレトの頃から変わらず巡り巡って吹きつづけ、南だか北だか知らないどこかの空を吹いている風のことを想像すると、今でも少しだけ気分が軽くなる。それは作者が意図していたこととは違うかもしれないけど。

(風に乗って)

4/27/2023, 1:09:52 PM

守護霊や前世や引き寄せの法則を信じてやまない母に育てられました。
「人は必ず今世での目的があって生まれてくるの」「どんな出来事も魂の修行」母の目に映れば人生の何もかもに意味があるようでした「きっと前世で」「導かれた」「霊的なメッセージだ」「あなたはAB型だから神経質ね」「こんな事が起きるのはマイナスの波動に引き寄せられているから」意味意味意味意味意味意味意味が横溢する。
苦しむ人を目にしたとき母は言うのでした。「みんな修行の為にそういう人生を自分で選んで生まれてくるの。だから可哀想なことなんてないのよ」
マルチ商法にセミナー商法に心霊商法に疑似科学に陰謀論に騙されそうして周りの人間の尽力と幸運からギリギリ手遅れになる手前で引き返したあと母は言うのでした。「全ては学び。必要があるから導かれた、無駄な経験ではなかった」
母は何もかもわかっているかのように穏やかな微笑みを湛えています。間違いも偶然も無駄も理不尽も世界の複雑さも目に入らず、起きる事全てに納得のいく意味がある美しい世界に生きているのです。一本道の迷いない人生。一片の後悔もない人生。

ソレを見続けて些かうんざりした自分は、自分が生きていることに何か意味を見出しそうになると、反射的に吐き気を催すようになったのです。母の満足気な微笑みが思い出されて。

(生きる意味)

4/26/2023, 3:01:30 PM

善悪なんて、主観的なものにすぎない?
でも主観をとった私に一体何が残るっていうんだろう。
善悪なんて、人それぞれだから自分が善いと思えばそれでいい?
だけど私たちはうんざりするほど社会的な動物で、違う世界を見ている者同士それでも寄り集まって、なんとか共有できる善とか悪がほしくて、探して、争って、妥協して、約束して、これを善と呼ぼうよ、こういうものは悪だよねって、殺したいほどうんざりしたって死ぬほど無様だって、そうやってくしかないんじゃないか。
どうせ正解なんてなくても、考え続けるその営みにこそ、きっと意味があるよ。そう祈ってる。悟った気になって放棄するな、考え続けよう、善とか悪とかについて。


(善悪)

4/25/2023, 2:51:28 PM

 流れ星って実際見た事ある? おれはない。そうそう星が見えるような場所に住んでいない。願いが叶うと真剣に期待することもない。なのにおれたちはもし流れ星が見えたら何を願うなんて話してみたりする。或いは誰に言うでもなく考えてみたりする。思うに、自分の願いを掬い上げて眺めるきっかけがほしくて、おれは考えるんじゃないか。素面で何かを願うには、頭があまりにもごちゃごちゃになってしまったから、流れ星が要るんだ。口だけじゃなく計画的に、身の丈にあった相応なものでないと、今更願ったところでーーそういうごちゃごちゃで願いは奥底へ沈んでいる。星に願うなんてロマンチックは本気じゃないから、何の責任も意味も力ももたないから、誰に押し付けることもないから、その戯れの中でだけおれはおれにも邪魔されず願うことができる。叶うことのない願いが果たされなかった約束がおれは本当は好きだ。顧みられることのないまま何の役にも立たないままでいつまでもひかっている。

(流れ星に願いを)

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