【さよならを言う前に】
ぽんっと背中に何かが当たった感覚
悪意なんか全く感じさせないそれは
場所やシチュエーションが違えば頼もしい応援にでも
心強い相棒の背中にでもなりそうな
でもここは違う
今まさに階段を降りていた僕には
それはあと1歩踏み出せなかったお別れの一押しとなった
何十回何百回と夢で知った浮遊感
最後に人間の顔など見たくもないが
ずっと足踏みしていた背を押してくれたのだ
お礼くらい言わないとと空中で身を翻して
「ありがとう」と一言
身体を回転させてしまったのだから
嫌でも相手の顔を見てしまうだろうと
少しの覚悟と共に言葉を発して視線を上げる
だけどそこにはもう誰の姿も無かった
落ちて身体を叩きつけようとしている僕なんて
誰の視界にも入らないようだ
いつものことだ
僕はすぅーっと息を吐いて
さよならを言う前に
最後の希望の歌をきみへ
2024-08-20
【空模様】
ふわふわの雲と背景の青色
飛行機の窓からの景色
この先にどんな結末が待っていたとしても
期待が上回る高揚感が全身を駆け巡る
雲と一緒に聞こえる魔法のミュージックが
多分これまでずっと誰かの身体を突き抜けて僕に届いて
僕さえも通り過ぎてまた誰かに届いて行く
またその時には僕の見た空とは違う色や形だけど
きっと気づく人は気づく幸せのカタチ
2024-08-19
【鏡】
暗闇の中、誰か誰かと歌うのに
動き出すことも出来ずにいる様は
僕そのものなのに
たった一枚の壁がきみと僕を遮って
ここに居ると歌うきみに
こちらから応えを届ける術もない
決して触れられないのに
等身大の僕を見つけて写しだして
そのままで居て良いと優しく包み込んでくれるきみへ
まるで鏡合わせのきみへ
映す背景が変わっても
人の想いを背負わされるきみへ
あの時のままで変わらなくても良いと歌う歌を
どうかあの時の系譜の歌を混ぜ込ませて
2024-08-18
【いつまでも捨てられないもの】
創作
自分が何も持っていないことを認められず
どうにかしてきみの一部になろうとずっと
ずっとそれだけを追ってきた
2024-08-17
【誇らしさ】
胸を張って背を正しても
何も成し遂げていなければ
張る胸もないのです
そうやって
そうやって教わって
そうやって言い聞かせてきたけど
他の何を盗られても
きみを好きな気持ちだけは
誰にも奪わせないで
ずっとここまで歩いてきたから
それだけは誇っていたいのです
2024-08-16