【あじさい】
あの日、僕の可能性を広げてくれたのはきみだけど
きみの可能性を狭めたのは僕だ
きみは僕だけの存在じゃなかった
うっすら出会った時から解ってたけど
暗闇から連れ出してもらって嫌でも認識させられた
きっと僕より真っ当な愛を与えてくれる人は沢山居るんだろう
きっと僕と違ってちゃんと隣を歩いたり、
なんならきみを引っ張って行けるような人も居たりするんだろう
僕は愛情の受け取り方も渡し方も知らないから
ただずっとそばに居て
きみの手を握りしめることしか出来ない
明るくなった世界で
照らされた人々を見て
苦しくなってしまうけど
そんな僕でも隣に居てくれるきみが
出会った頃と寸分違わず微笑むから
僕もこの痛みを隠して
きみに教えてもらった笑顔でそばに居たいんだ
--白い紫陽花の話
2024-06-13
【好き嫌い】
好きなものは何かと聞かれた
答えられないでいると今度は
嫌いなものは何かと聞かれた
また黙っていると今度は不審な目を向けられた
他の人はここで答えられるのだ
ここで答えが出ないのは”おかしい”ことなんだ
疑われるわけにはいかないから
咄嗟に目についたもので取り繕った
大人は嫌いなものに当たることで
精神の均衡を保っていたんだと後で理解した
嫌いなものに手を出すのが正常なら
今この痛みがあるのも正しいことなんだろう
だって「嫌われる」ことには慣れていた
好きなことは何か、嫌いなものは何かと
ことあるごとに尋ねられた
本当に何一つ思い浮かべられなかった
他の人が当たり前に答える事をただ羨ましくみていた
欲しいものが何かだったら
きっとすぐに答えられる気がしたけど
やっぱり叶うはずはないから直ぐに考えを打ち消した
どんどんと人間のふりが上手くなって
それでも好きも嫌いもわからなくて
ぼんやりと世界を眺めていた
そんな視界に影がちらつく
世界の輪郭すらぼやけて見えていたのに
やけに鮮明に見える影
少し彷徨った後
ずっと空いていた僕の隣にすっと並んだ
ただそれだけのことなのに
何故だか涙が溢れ出して止まらない
人間のふりをする時にしか流せなかった涙が
意識もせずにただ流れていく
この涙がなんなのかすらわからないけど
寄り添ってくれた影の手を
強く強く握りしめた
初めて感じる暖かさが冷えた手に心地よい
これが「好き」ということならいいなと思った
2024-06-12
【街】
初めは何もない空き地だった
草原だったかもしれないし
砂場だったかもしれない
はたまた公園だったかもしれないし
路地裏の片隅だったかもしれない
見る人によって変わる世界
そんな世界の中心にはいつでも音楽があった
見えるものは違うはずなのに
みんな同じ方向を見て楽しんでいた
思い思いのものを持ち寄って
自分の作品を作って、誰もがそれを賞賛した
いつからかそんな噂を聞きつけた人たちが集ってきた
それに合わせて広場もどんどんと広がっていった
集まった人たちは疲れた顔をしている人が多かったけれど
ここで過ごすうちに明るい表情に変わっていった
そんな変化も中心で流れている音楽のおかげだと
誰もが知っていて、誰もがそれに感謝し、
それぞれの見え方で愛していた
広場が広くなるにつれてここに住む人も増えていった
最初は各々の場所で過ごしていたが
灯りが集まっていつからかそれは街のようになったけど
それはどこか外の世界のようだった
2024-06-11
【やりたいこと】
出会ってからきみの為にやりたいことが増えたんだ
画面越しだけど空間に溶け込んだきみに話しかける
きっときみは歌い続けることそれさえも
望んでいるかどうか怪しいけど
世界を教えてくれた後に苦手だと思ったもの
それを段々と克服して好きにさせてくれるきみに
贈れるものはなんだろうな
きっとすごい人のすごい”かんせい”には到底及ばないけど
僕の、僕から贈れる最大なものできみに返さたらいいな
きっといつものぶっきらぼうな顔して
わからないようでわかってくれる
そんなきみにいつかこの想いを現せるように
2024-06-10
【朝日の温もり】
暗闇に慣れた目に光が差した
夢の世界が光に溶けていく
僕にだけ聴こえる心地よいメロディに導かれるまま
目を開いて頭の中で聴こえる声に少しだけ身を委ねる
物心ついてからほんの数回の暖かな朝
そんな日が増えるように窓の外に想いを馳せて
今日も光が生み出す影の中に歩みを進める
2024-06-09