『待ってて』
うちの猫は可愛い。
原材料が「可愛い」で出来ている。
毎日、わたしが帰るのを待っててくれる。
早く帰りたい。
『伝えたい』(創作)
─ 文字を入れてください ─
もうどれくらいこの画面とにらめっこしていることだろう。
生命保険の受取人にメッセージが遺せるサービスを知ったのは、つい先程のことだ。生保レディから勧められるままに、メッセージを遺すことになったのだが、僕が死んでから届くメッセージなんて、なんだか想像がつかない。
お涙頂戴なメッセージは柄でもないし、感謝の想いを綴るのも照れくさい。倦むに倦んで、フッと、「そもそも、まだ死んでもいないし元気なのだから、遺書みたいだな」と思ったところで急に気が滅入ってきた。
僕は、生保レディにキャンセルを申し出た。
伝えたいことは生きてるうちに伝えよう。
『この場所で』(創作)
「夜はまだ寒いな。」
ネックウォーマーを引き上げながら、つぶやいた。
職場を出て足早に路地裏を抜ける。
誰にも会わないように人気のない道を選んだ。
目撃者はいないはずだ。
待ち合わせのビルの前に、あいつはもう来ていた。
「おまたせ。早いね。」
わたしはにこやかに手を振りながら近づいた。
隠し持ったナイフが妖しく光る。
あの人が命を断ったこの場所で、わたしも命をかける。
こいつだけは許さない。
『誰もがみんな』(創作)
あの日の恋はセピア色
遠い遠い追憶の秘め事
誰もがみんな知る月を
自分の物のように思えたあの日
あなたに抱きしめられ
肩越しに見た月はレモンの形によく似てた
わたしだけのあなただと
思い込んでた遠い日の恋心
あの日の恋はセピア色
幼さと淡さに弾けて消えた遠い恋
『花束』
趣味と言えるほどの腕前ではないですが、たまに折り紙で暇つぶしをすることがあります。
よく作るのは立体の薔薇です。
裏表同色の高級な折り紙で折ると、一瞬なら本物に見えるほどの折り方で作ります。がくも葉も茎も折り紙で作り、色を変えて数十本作成し、ラッピングすると花束になります。
プレゼントに添えると喜ばれますし、驚く方が多いですが、折り紙の花束だけではプレゼントにならないですよね。
あくまでもプレゼントのおまけです。
生花の薔薇の花束だったら、それだけでプレゼントです。
やっぱり値段の差って、手間では埋まらないみたいです。