【238,お題:バカみたい】
バっカみたい」
好きな人がいた、その人の好きな人は私じゃなかった
どうしても彼のことがほしかった
彼の一番の理解者になりたいし、私のことを一番理解しているのは彼であってほしい
彼の隣に居るのは絶対に私がいいし、私の隣だって彼じゃないと嫌だ
彼を手に入れたくて、あらゆる手段を試した
お化粧だって上手に出来るようになったし、お裁縫も料理も勉強も頑張った
お金も彼のためだけに使った、毎日少しでも可愛く思ってもらえるように努力して
ちょっぴり卑怯な方法にも手を染めた
でもあなたが目で追うのは、私ではなかった
悔しくて恨めしくて妬ましくて、お前なんて消えてしまえばいいと思った
そしたらきっと、私が彼の一番なのに
「ごめん俺、やっぱり女の子と付き合うの無理」
お前さえ居なければきっと...
「えっ、なん...で?」
私が...
「...俺、男が好きなんだと思う」
...私は絶対、あなたの一番にはなれない。
一緒に歩いてきた道を帰りは一人で歩いた
惨めで悔しくて、心がどうにかなりそうだった
これまでずっと彼以外考えずに過ごしてきたのに、全部彼に捧げたのに...
「私...
【237,お題:二人ぼっち】
ずっと一人でいたんだ、もう時間の感覚とか麻痺するくらいずっと
薄暗い闇は僕の存在を覆い隠してくれて、誰も僕に気付かない
人からの無関心も、傷痕から流れる生命の温かみも
慣れてしまうと心地よいもので、暗闇にぽっかり浮かぶ僕を受け入れるように
沼の底のような陰影はどんどん膨らんで大きくなっていった
いつだったっけ、僕が一人ぼっちではなくなったのは
濁った天井をぶち破るようにして、君は入ってきた
転がり落ちるように僕と同じ高さまで沈んでくると、薄く目を開けて色のない唇でそっと笑った
そして無遠慮に僕を掴み出そうとする手とは全く違う、柔らかい温かさがある手で
君はそっと薄いガラス細工に触れるように僕の手を包んだんだ
久しぶりに触れた人間の体温に驚いて、自分がこんなにも冷たかったことにもう一度驚いた
君は僕を外に引きずり出そうとすることはなかった、話しかけてくることもなくて
ただひたすら、僕のとなりに座って僕と同じようにぼーっと船を漕いでいた
不思議とその空間を鬱陶しいとは思わなかった
一人でいいと思っていたのに
その日から僕たちは二人ぼっちになった。
【236,お題:夢が醒める前に】
あと少しだけ、と思ってしまう。
きっと君も分かっているんだろう?このままではダメだって
分かっていて、なにも知らないような無邪気な顔で笑うんだろう?
ああダメだ、その君の優しい無関心に甘えたくなる
君はきっと、私のどんな醜い部分に気付いても
私が自分から言い出すまで待っていてくれるよね
でもそれではダメなんだ、
もう覚悟を決めなくてはならないんだ私は
...でも、この甘やかな夢から醒める前にもう一度だけ、君に会いたい
君だけには嘘を付いて消えたくない、君には包み隠さずに全てを知っていてほしいんだ。
【235,お題:胸が高鳴る】
君が待っていてくれる、そう思うだけで胸が高鳴る
君と一緒にいれるだけで、こんなにも笑顔でいれる
君がかけてくれた魔法
世界がより美しく見えるのは、きっと君のおかげなんだ
【234,お題:不条理】
つくづく思うが、この世は不条理で溢れている。
罪のない人間が罰され、疫病で大勢が死ぬ
道理に適っていないんだ。
神様は不平等で、気まぐれに大勢を殺し、気まぐれに大勢を助ける
もしこの不安定で理不尽なところが人生の楽しさだとでも言うのなら
死のすぐ側でもがき苦しんでいる人々の、その目を見ながら言ってほしい
誰もが幸せになる権利を持って生まれてくるが、持っているだけでは幸せになれない
理不尽で不条理だ
だが、言うだけでなにも変えようと思えない私もまた
彼らと同じレベルの人間と言うことなのだ。