無音

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【237,お題:二人ぼっち】

ずっと一人でいたんだ、もう時間の感覚とか麻痺するくらいずっと

薄暗い闇は僕の存在を覆い隠してくれて、誰も僕に気付かない
人からの無関心も、傷痕から流れる生命の温かみも
慣れてしまうと心地よいもので、暗闇にぽっかり浮かぶ僕を受け入れるように
沼の底のような陰影はどんどん膨らんで大きくなっていった

いつだったっけ、僕が一人ぼっちではなくなったのは

濁った天井をぶち破るようにして、君は入ってきた
転がり落ちるように僕と同じ高さまで沈んでくると、薄く目を開けて色のない唇でそっと笑った
そして無遠慮に僕を掴み出そうとする手とは全く違う、柔らかい温かさがある手で
君はそっと薄いガラス細工に触れるように僕の手を包んだんだ

久しぶりに触れた人間の体温に驚いて、自分がこんなにも冷たかったことにもう一度驚いた

君は僕を外に引きずり出そうとすることはなかった、話しかけてくることもなくて
ただひたすら、僕のとなりに座って僕と同じようにぼーっと船を漕いでいた
不思議とその空間を鬱陶しいとは思わなかった

一人でいいと思っていたのに

その日から僕たちは二人ぼっちになった。

3/21/2024, 1:12:09 PM