【218,お題:たった1つの希望】
終わった...これはもう完全に終わった
温かな光が窓から差し込んでいる
鳥のさえずりに、青く広がる清々しいまでに澄んだ空
云うまでもなく最高の目覚めだろう、そう
―――今の時間が10時半だということを除けば
「あぁあぁぁ......終わったぁぁぁ...」
完全に寝坊した、
朝起きて登校時間をとっくにすぎてた時の絶望感って計り知れないよな...
これはもう諦めるしか...潔く怒られるか...
「いや...待てよ」
ふと思い着いたたった一つの希望、こういう時って謎に頭が働く気がする
「裏声使って電話するればいけんのでは...!」
思い着いたのは、母親のふりをして電話を掛けるアイデアだった
朝寝坊遅刻確定でパニックになってる脳は、どうやら正しく回ってはくれないようだ
「ははは、よぉし完璧だ...!これでどうにかやり過ごすぞ...!!」
嬉々として電話を取りに向かう
なお、数秒でバレて説教コースへ突入することになるのはこの後すぐのことであった
【217,お題:欲望】
あれが"欲しい"これが"欲しい"と"望む"のが欲望というものなんだろう
確かに欲しがって手を伸ばしてばっかりでは、せっかく手に入れた物を抱えていられない
かといって何にも手を伸ばさずにいれば、だんだんと世界が色褪せていってしまう
何事も限度が大切ということだ
【216,お題:列車に乗って】
旅行が好きだ、
行き先を決めずに気の向くままに出向いた土地で、美しい景色や物に触れるのが好きだ
私は原始人の血でも流れているんだと結構本気で信じている
人で賑わう観光名所に行くのも嫌いではないが
灰色の町並みや、オフィスビルよりも
緑に囲まれるほうが遥かに心が安らぐのだ
大人になった今も木登りは好きだし、河原の岩を飛び歩いてどこまでも行ってしまう
どんな生物も最初は母なる自然から生まれてきた
大地そのものが大きなゆりかごで、温かい木漏れ日や川のせせらぎと共に育ったのだ
だから私は今日も列車に乗って行く
久しぶりの休暇だ、思う存分楽しんでこなければ
【215,お題:遠くの街へ】
遠くの街へ行こう、誰も僕らを知らないとこまで逃げてしまおう
君は悪くない、ほんの少し運が悪かっただけだ
君は絶対に悪くないよ、だからそんなに怯えないで
お願い、笑って
今まで貯め込んでた使い道の見つからなかった貯金たち
使うとしたらきっと今だろう
ありったけの金とスマホと、やり終えていないゲームもカバンに詰めて君の手をとって走り出した
どこまでも行こう、大丈夫二人でいればどうとでもなるさ
遠い遠いどこかの街で、誰も僕たちを知らない街で
もう一度最初からやり直したいんだ
こんな終わり方なんてしたくないから、これは
僕たちの生きていくための逃避行なんだ
【214,お題:現実逃避】
前を向くのが嫌なときは、ちょっとだけ夢に沈む
現実逃避と言ってしまえば、なんとなくネガティブな印象になるが
自分であり続けるため必要な作業だった
たくさんの"もしも"の設定を考えて遊ぶ
誰にも絶対邪魔出来ない、自分だけの避難場所
そこには、空飛ぶクジラがいて
食べても食べても無くならないお菓子に、喋る小鳥や歌う草木
重力なんて関係なくて、空を飛んで水を蹴って遊ぶ
それに、僕の友達がいる
彼らはみんな僕の理解者で、友達で、恋人で、家族
どこにも行かないでずっとここにいてくれる、想像力でいくらでも輝いていく友達
あの子達はいつでも"ここ"にいるから、僕を待っていてくれる帰る場所がある、だから
今日も安心して嵐の中を進めるんだ