【183,お題:優しさ】
優しさを向けられると混乱する
自己肯定感が、底辺どころか床突き抜けて地球の裏に行きそうな程には低いから
優しさを向けられると脳内が、?でいっぱいになってしまうのだ
優しさは居心地が悪くてむず痒い
照れてるんだと、周りは勘違いしてるけど
綿で首をじわじわ絞められてる感じがする
少し苦しいけど温かくて、自分自身この感じが何なのか分かりかねている
【182,お題:ミッドナイト】
初めてお母様の言いつけを守らなかった日
生まれて初めて門限を無視して、手を引かれるままに塀の外に踏み出した
ずっと窓枠の中から見ていた景色、額縁に飾られた綺麗な絵画のような星空が
自分の目の前に存在することが信じられなくて、前を歩く彼を追いかけながらずっと上を見上げていた
「すごい...初めて暗い時間にお外に出た...」
「おりこーさんは夜更かしも禁止なのか?子供は夜更かししてなんぼだろーよ」
数歩先を歩く彼がぐんと伸びをして、これからどうしたいー?と振り返って笑った
「どう...したい?どうだろう...まずは寝るとことか、...?」
「...はぁ?お前まさか、これから寝る気でいんの?」
「えっ?だって早く寝ないと身体に悪いって...」
はぁぁ、と心底呆れましたみたい溜め息を付くと、彼はこっちに駆けてきて
ひょいと脇に手をいれると、そのまま私を上に持ち上げた
何事かとフリーズしているとそのまま頭付近に下ろされ肩車の形になる
「ほら行くぞ」
「どこに?お家?」
「違うわ優等生、遊びにだよ」
夜は自由な時間なんだ、と彼は言った
「ミッドナイトシティ、ってとこかな、変な奴ばっかで逆に楽しいぞ」
くくく、と笑いを堪えるような様子に、何となく釣られて笑みをこぼす
いつもはとっくに布団に入る時間だが全く眠くない
まるで魔法のようだと、ふと思いながら薄く微笑みをこぼした。
【181,お題:安心と不安】
僕はね、安心と不安は表裏一体だと思っているんだ。
人は様々なことで安心を得る、人との繋がりだったり
何かを手にしたり、知識なんかも安心に繋がるよね
だが、得たものは得た瞬間に失うことが確定されてしまう
大切な人と死ぬまで、死ぬその瞬間まで一緒に居ることは出来ないし
手にしたものが消耗品であろうとなかろうと、失くす 破損する 誰かに奪われる
と、失うチャンスは十分にある。知識や記憶も無限に蓄えられるわけじゃない
安心を手にした時、おまけのように不安もセットになって付いてくる
裏切り 喪失 反心 悔恨 怨念 忘却
いつも消えてなくなるかも分からない不安定なものに縋るより、自分で安心を造り出せば良いのに
何度裏切られても、期待通りでなくても人は人へ安心を求める
不安のリスクがあるのに、どうしてわざわざ紐を切ってバンジージャンプをするような真似をするんだろう
きっと僕には理解できない何かが、皆にはあるんだろうね
これは僕の一つの仮説であり、意見でしかないから真に受けなくて良いんだけど
馬鹿な方が、この世界は生き抜きやすいと思うなぁ
【180,お題:逆光】
私は写真を撮るのが下手で、よく光の方向を間違えてしまう。
被写体の後ろに光源が来たら、逆光になって写りが悪くなるなんて当たり前なのに
仕組みを理解することと、それを実用することはまた違った努力が必要だ。
【179,お題:こんな夢を見た】
こんな夢を見た
夢の中のボクは今のボクより目線が低くて子供の姿だった。
見慣れない街の中に立っていて、ボク以外にも子供が2人
「○○○○!!△△△~!△?」
「×××!?○○○○~?」
「□□□...○○?×××ー!」
「○○○!×××××~!」
ボクを見てしきりに口を動かしているけど、ボクの耳には一音も届いていない
何度も口を動かして首をかしげて伝わっていないと分かると、ふいに2人とも悲しそうな顔をした
それから2人とも並んで歩きだす、ボクはどうすれば良いか分からなかったから
静かにその背中を見送っていると、2人が振り返ってパーにした手を何かを掻くように動かした
付いてこいのジェスチャーだろうか?2人は招き猫のように手を動かしている
進もうと思って一歩踏み出そうとした
確かに足は動かしたはずだ、動かしたはずなのに
何故か異様に視線が低い。
慌てて2人が駆け戻ってくる、やけにローアングルな視点に初めて自分が倒れていることに気付いた
大きくて重い何かに押さえつけられているような、絡め取られているような感覚
不快感はなかったが、特段いい気分でもなかった。這いずって進もうとすればするほど何故か遠ざかっていく
2人が手を伸ばしてボクの腕を掴もうとした、手伝ってくれるのかと僕も手を伸ばした
だがその手は空気を掴むようにすり抜けて、2人が驚きと悲しさが入り交じったような目でボクを見た
2人はもう一度手を伸ばしてくれた、でもボクはもう手を伸ばそうと思えなかった
腕の肘から先が、そこだけ存在が失くなってしまったかのように消えている
手のひらも失くなってるから地面を這いずることも上手く出来ず
大きくて重たい何かに引きずられて、徐々に徐々に2人が小さくなっていく
視界が酷く歪んだ、涙ではない。目に映る世界そのものがトリックアートのように歪曲して
もとの形が分からないほどぐちゃぐちゃに変形して、色も白黒からカラフルになったり目まぐるしく変化した。
2人の姿はもう見えない、ただ最後に声が聞こえた
男のものとも女のものとも付かない声で「諦めないで」と一言
その言葉の意味もよく分からないまま、ボクは目覚めた。
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「どうした、居眠りか」
「いえ、少しボーッとしていただけです。」
「しっかりしてくれよ?今回の勝利はお前に掛かってんだぞ」
「分かっています。」
夢のことなんて差程重要なことじゃない、銃を握った手が冷たい
今は今のことだけ考えれば良い、ボクは前だけ見据えて静かに目を瞑った。