無音

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【182,お題:ミッドナイト】

初めてお母様の言いつけを守らなかった日
生まれて初めて門限を無視して、手を引かれるままに塀の外に踏み出した

ずっと窓枠の中から見ていた景色、額縁に飾られた綺麗な絵画のような星空が
自分の目の前に存在することが信じられなくて、前を歩く彼を追いかけながらずっと上を見上げていた

「すごい...初めて暗い時間にお外に出た...」

「おりこーさんは夜更かしも禁止なのか?子供は夜更かししてなんぼだろーよ」

数歩先を歩く彼がぐんと伸びをして、これからどうしたいー?と振り返って笑った

「どう...したい?どうだろう...まずは寝るとことか、...?」

「...はぁ?お前まさか、これから寝る気でいんの?」

「えっ?だって早く寝ないと身体に悪いって...」

はぁぁ、と心底呆れましたみたい溜め息を付くと、彼はこっちに駆けてきて
ひょいと脇に手をいれると、そのまま私を上に持ち上げた
何事かとフリーズしているとそのまま頭付近に下ろされ肩車の形になる

「ほら行くぞ」

「どこに?お家?」

「違うわ優等生、遊びにだよ」

夜は自由な時間なんだ、と彼は言った

「ミッドナイトシティ、ってとこかな、変な奴ばっかで逆に楽しいぞ」

くくく、と笑いを堪えるような様子に、何となく釣られて笑みをこぼす
いつもはとっくに布団に入る時間だが全く眠くない

まるで魔法のようだと、ふと思いながら薄く微笑みをこぼした。

1/26/2024, 1:13:37 PM