【179,お題:こんな夢を見た】
こんな夢を見た
夢の中のボクは今のボクより目線が低くて子供の姿だった。
見慣れない街の中に立っていて、ボク以外にも子供が2人
「○○○○!!△△△~!△?」
「×××!?○○○○~?」
「□□□...○○?×××ー!」
「○○○!×××××~!」
ボクを見てしきりに口を動かしているけど、ボクの耳には一音も届いていない
何度も口を動かして首をかしげて伝わっていないと分かると、ふいに2人とも悲しそうな顔をした
それから2人とも並んで歩きだす、ボクはどうすれば良いか分からなかったから
静かにその背中を見送っていると、2人が振り返ってパーにした手を何かを掻くように動かした
付いてこいのジェスチャーだろうか?2人は招き猫のように手を動かしている
進もうと思って一歩踏み出そうとした
確かに足は動かしたはずだ、動かしたはずなのに
何故か異様に視線が低い。
慌てて2人が駆け戻ってくる、やけにローアングルな視点に初めて自分が倒れていることに気付いた
大きくて重い何かに押さえつけられているような、絡め取られているような感覚
不快感はなかったが、特段いい気分でもなかった。這いずって進もうとすればするほど何故か遠ざかっていく
2人が手を伸ばしてボクの腕を掴もうとした、手伝ってくれるのかと僕も手を伸ばした
だがその手は空気を掴むようにすり抜けて、2人が驚きと悲しさが入り交じったような目でボクを見た
2人はもう一度手を伸ばしてくれた、でもボクはもう手を伸ばそうと思えなかった
腕の肘から先が、そこだけ存在が失くなってしまったかのように消えている
手のひらも失くなってるから地面を這いずることも上手く出来ず
大きくて重たい何かに引きずられて、徐々に徐々に2人が小さくなっていく
視界が酷く歪んだ、涙ではない。目に映る世界そのものがトリックアートのように歪曲して
もとの形が分からないほどぐちゃぐちゃに変形して、色も白黒からカラフルになったり目まぐるしく変化した。
2人の姿はもう見えない、ただ最後に声が聞こえた
男のものとも女のものとも付かない声で「諦めないで」と一言
その言葉の意味もよく分からないまま、ボクは目覚めた。
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「どうした、居眠りか」
「いえ、少しボーッとしていただけです。」
「しっかりしてくれよ?今回の勝利はお前に掛かってんだぞ」
「分かっています。」
夢のことなんて差程重要なことじゃない、銃を握った手が冷たい
今は今のことだけ考えれば良い、ボクは前だけ見据えて静かに目を瞑った。
【178,お題:タイムマシーン】
タイムマシーンがあったとしたら、僕は過去の僕に言いたいことがあるんだ
重大な間違いをしました、未だに色褪せない後悔に苛まれて生きています
もし過去に戻れるのなら、その間違いを正したい
そしたらこんなに苦しまなくてすんだんだから
【177,お題:特別な夜】
いつもの夜が、今日だけは特別な夜
あなたが隣に居るから特別な夜
【176,お題:海の底】
冷たく暗い海の底では、どんな照明も役には立たない
一寸先は闇、自分の鼻先すらも見えない程の濃い黒
その中で小さくうずくまって目を閉じる
目を開けてても閉じてても変わらないのなら、少しでも楽な方を選ぼう
寒さに眠ることも出来ない、静かに目を閉じたまま闇と一体となって
このままエンドロールまで行こうじゃないか
埋め尽くされた黒の隙間、僅かに目を開いても見える景色は変わらない
「誰か見付けて下さい」と、囁いたのはどこの誰か......
【175,お題:君に会いたくて】
街の夜景を見た時、絵を描いている時、朝ご飯を食べている時
日常のふとした瞬間にいつもちらつく光景がある
僕のとなりはいつも一人分空いていて
その空白に向かって話し掛けようとして、何度言葉を飲み込んだか
君はもういない、この世界のどこにも
どんなに会いたいと思ったことか、朝も昼も夜もただそれだけ思い続けていた
君に会いたくて、どんなところにも行ってみたけど
会うことは叶わなくて、当たり前だよね
距離なんてものが届かないほど遠い場所に君は居るんだろう
「会いたい」
一人分空いたベット、一人分減った食事、一人分減った会話
その一人分が僕には何十人分にも重く感じられて
埋まらない隙間を抱えたまま、死んだような生活を続けている
叶うならば、他に何を失っても良いからオレからあの子を取り上げないで
君に会いたいよ、隠れてないで姿を見せてよ
広く寒いベットで一人横になり、静かに息を止めた。