【164,お題:色とりどり】
色とりどりの紙が周りを包囲している
その中心に鎮座しているのは、少し前に誕生日を迎えたばかりの2歳の娘
屈託なき笑顔で散らばった色とりどりの折り紙と戯れている我らがプリンセス
思わず目眩がした、誰だここに折り紙放置して外出したのは、......俺なんだよな
残念ながら妻は育児に疲れて奥の寝室で寝ているし
いつも頑張っているところを見ているから起こすのも忍びない
仕方がないので俺がプリンセスのお相手役というわけだ
「彩花ー、パパ帰ってきたよー」
にへへ、と笑う娘
思わず頬が緩む、真後ろの世紀末がなければ癒されたんだろう
側に寄ってさらに絶望、折り紙の上からジュースをこぼしている。勘弁して下さいプリンセス
「ぱーぱ!だこぉー」
両腕を広げて背伸びをしている娘、それだけでまあいっかと許せてしまうから不思議だ
......やっぱり片付けは後にしよう
【163,お題:雪】
手に乗せた雪は程よい冷たさを残して静かに無くなっていく
指の隙間を伝って溢れる涙にも似た水滴
それを少しの間ぼうっと眺めてから、手を振って水滴を払い落とすと
その人はまた歩きだした。
【162,お題:君と一緒に】
君と一緒にどこまでも行きたい
ずっと側に居るのは僕がいいし、大好きも愛してるも全部独り占めにしたい
いつまでも笑っていてほしいし、どこの誰よりも幸せになってほしい
妥協でも代用でもない、君という人間がたまらなく愛おしい
君と一緒に居たい
いつまでも、何があっても側で守り続けたい
【161,お題:冬晴れ】
木枯らしが吹かず、昼間は少し暖かいそんな日
こぎつねがひょこひょこと森を歩いていた
一歩進む度に細い脚が雪に沈む、その感覚が珍しく
泳ぐようにして大雪が積もった森のなかを、ひょっこひょっこと不格好に歩いた
『こんにちは、何をしているの?』
雪に埋もれていると、すぐ横から小さな声
見ると、こうさぎが首をかしげて雪の上に座っていた
『こんにちは、散歩をしているんだ』
ひょっこりひょっこり、雪に脚を取られながらこぎつねが進む
ぴょこぴょこぴょこ、雪の上を軽々と移動しながらうさぎが追う
『歩きづらくないの?』
『すごく歩きづらい。...ところで、君は何でそんなに軽々と動けるの?』
こぎつねはこうさぎの脚に注目した、こうさぎの脚は短くて平べったい
より多くの面が雪をとらえ沈みにくくなっているのだ
加えてこうさぎはこぎつねの身体よりもずっと小さい、身体が軽くて動きやすいんだろう
『僕の脚は特別だからね』
こうさぎがふふんと胸を張る、こぎつねはくしゅんと一つくしゃみをした
『雪で濡れたから寒くなってきた』
『それなら僕の家においでよ!』
ぴょんぴょんこうさぎが跳ねるので、キラキラと雪が飛んだ
『じゃあそうするよ、よろしくこうさぎ』
『うん、よろしくこぎつね』
ひょっこひょっこ、ぴょこぴょこぴょこ
2匹は並んで冬の森に消えてった
【160,お題:幸せとは】
とても悩ましいもの
考えようとしたら一生辿り着けないが
生きていれば
案外すぐとなりにあるもの