灯月

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9/14/2025, 6:07:25 AM

【空白】

なにもない空白は
すべてを失った証ではなく
新しい息吹を待つ余白。

過去の痛みを抱えた手を
そっとひらけば
風が通り抜けてゆく。

赦しは忘却ではなく
自分をほどく鍵。

循環の輪がまた廻り
心の空白に
やさしい芽吹きが宿る。

その空白こそが
未来を描くための
いちばん純粋なキャンパスなのだ。

9/13/2025, 5:09:02 AM

【台風が過ぎ去って】

荒れ狂う風のあとに
静けさが戻ってくる

折れた枝を拾い集め
また手を動かす日々へ

途切れていた流れは
やがて自然に繋がり直し
澄んだ空気が胸いっぱいに広がる

残されたものは
与え合い支え合う心だけ

嵐は壊したのではなく
本当に大切なものを
浮かび上がらせてくれた

9/12/2025, 5:33:33 AM

【ひとりきりのとき】

信じていたつながりも、時の流れの中で形を変えていく。
気づけば、隣にいたはずの温もりは遠くなり
ただ自分の足音だけが響く道を歩いてる。

変化は容赦なく訪れる。
望んでいたはずの前進も、思いがけない衝突も
ひとりきりの静けさの中で、胸に重く残っていく。

けれど、その孤独は空白ではない。
そこには確かに、自分自身の声がある。
誰の影響も受けずに、ただ「私」として立っている感覚。

ひとりきりのときほど、人は揺さぶられ
そして強くなる。
孤独の痛みさえも、やがては未来へと続く
新しい調べの一部になるのだろう。

9/9/2025, 1:32:50 PM

【フィルター】

朝、鏡の前に立ったとき、私はいつものように心の
中で小さな声を聞いた。
「本当はどうしたいの?」

けれど私は、その声にフィルターをかけてしまう。
「こうすべき」「こう見られたい」ーーそんな条件を通
して見る自分は、いつも少しぼやけている。

ある日、友人に何気なく言われた言葉が胸に刺さっ
た。
「君って、もっと素直でいいんじじゃない?」
その瞬間、フィルター越しに見えていた景色が少し
揺らいだ。

私は気づく。
恐れていたのは他人の評価ではなく、自分の本音と
向き合うことだったのだ。

だから今日は、小さな決断をしてみる。
フィルターを一枚外して、心の声に従ってみる。
すると、不思議なくらい景色が鮮やかに見えた。

それは大げさな変化ではなかったけれど、確かに世
界は少しだけ澄んでいた。

9/8/2025, 1:23:54 AM

【雨と君】

窓を打つ雨の音が、やけに胸に響いていた。
ずっと抱えてきた不安や迷いが、冷たい雫みたいに心の中で溜まっていたからかもしれない。

外に出れば、視界は灰色に閉ざされて、まるで自分の足元さえ見えなくなるようだった。動きたいのに、動けない。そんなもどかしさが、雨の重さと一生にのしかかってきた。

でも、ふと顔を上げると、傘も差さずに立っている君がいた。びしょ濡れのはずなのに、不思議とその表情は晴れやかで「大丈夫だよ」と無言で伝えてくるみたいだった。

その瞬間、胸を締めつけていた見えない鎖が少しだけほどけた気がした。
雨はまだ降り続いている。けれど君がそこにいる限り、この雨はきっと、私を縛るものじゃなく、新しい一歩へと洗い流してくれるものになるんだろう。

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