【雨と君】
窓を打つ雨の音が、やけに胸に響いていた。
ずっと抱えてきた不安や迷いが、冷たい雫みたいに心の中で溜まっていたからかもしれない。
外に出れば、視界は灰色に閉ざされて、まるで自分の足元さえ見えなくなるようだった。動きたいのに、動けない。そんなもどかしさが、雨の重さと一生にのしかかってきた。
でも、ふと顔を上げると、傘も差さずに立っている君がいた。びしょ濡れのはずなのに、不思議とその表情は晴れやかで「大丈夫だよ」と無言で伝えてくるみたいだった。
その瞬間、胸を締めつけていた見えない鎖が少しだけほどけた気がした。
雨はまだ降り続いている。けれど君がそこにいる限り、この雨はきっと、私を縛るものじゃなく、新しい一歩へと洗い流してくれるものになるんだろう。
9/8/2025, 1:23:54 AM