「真昼の夢」
まぶしさの中に
ふと溶け込んだ 白昼のまどろみ
日差しと影が交わる場所で
私は誰でもなくなり
そして 本当の私に還ってゆく
足元を流れる時間は
止まることなく でも急がずに
いつものように 優しく進んでいく
揺れる心に そっと手を添えて
ひとつ、またひとつと
整えてゆく 目には見えない重心
これは夢か 現か
けれど確かに いまここにいる
醒めない夢のような午後に
私はただ、静かに息をしている
それだけで
すべてが、うまくいっている気がした
「二人だけの。」
遠く聞こえたあの鐘の音は
運命がそっと動いた合図。
重ねた痛みも、祈りも
静かに羽ばたく影の中に隠して。
あの日からずっと
私たちは「行く」ことを選び続けている。
寄り添うことでしか
癒えないものがあることを知っているから。
たとえ嵐の夜でも
たとえ誰にも理解されなくても
この航海は
「二人だけの」
誓いそのもの。
だから今日も、風の向こうへ。
何も語らずに、ただ
あなたとーー。
「夏」
熱を孕んだ風が吹き抜けるたびに、
眠っていた力が体の奥でざわめき始める。
光は鋭く、影は濃く、
この季節はどこか容赦がない。
でも、逃げずに向き合えば、
その中にしかない真実がある。
ゆらめく空気の中で、
私は試されている。
本当の自分でいられるかーーと。
過去に縛られず、
未来に怯えず、
ただ、今この瞬間を生きる勇気を。
熱い空に、叫びたい。
私はここにいる。
この夏を、自分の色で染めるために。
「隠された真実」
静かに積み上げた日々の中に、
誰にも見せない本当の顔がある。
始まりは、些細な気づきだった。
誰かのために、じゃなく
ただ、自分を裏切らないために。
繰り返す作業、無言の工夫、
手の中に宿る記憶が語る真実。
飾らずとも、叫ばずとも、
その眼差しが語ることがある。
本物は、いつも静かだ。
そして、誰よりも強い。
「心だけ、逃避行」
誰にも見せない地図を、胸の奥でひそかにひらく。
身体はここにいても、心だけは遠くへ旅をしていた。
澄んだ青に吸い込まれるような静寂
感情がほどけてゆくような優しい流れ。
あふれる日常を喧騒を背にして
私はただ、無言のまま夢の岸辺へと向かう。
願いも、傷も、希望もすべて包み込んで
心は今、誰にも縛られない空を泳ぐ。
戻る場所があるからこそ
この逃避行は、自由の証だと知っている。