「どうしてこの世界は」
どうしてこの世界は
こんなにも優しくて、苦しいのだろう。
朝の光に目を細めた瞬間
ただそれだけで満たされる心がある。
なのに、ふとした言葉で傷ついて
もう何も信じられなくなる日もある。
小さな手で触れた花に
「きれい」と思えたその気持ちを
いつから私は遠くに置いてきたのだろう。
だけど
胸の奥がふと揺れる時
見えない糸で誰かと繋がっていると感じる。
ああ、きっとこの世界は
わからないことだらけでいい。
それでも大切なのは
いつも静かに、そばにある。
「さあ行こう」
胸の奥、そっと灯る光
静寂の中にある 忘れられた聖域
星々の記憶が 道しるべとなり
いま、心の扉を開く
ゆく先は
はじまりよりも古く
未来よりもやさしい場所
「水たまりに映る空」
ふと足元を見ると、
雨上がりの水たまりに空が映っていた。
手に届くはずがないあの広さが
こんなにも近くにあることに
胸がふるえる。
はじまりは、いつも小さな揺らぎ。
静かに波紋を描きながら
内と外が溶け合っていく。
あの雲の向こうに呼ばれている気がした。
だけど、急がなくていい。
源は、すでにここにある。
ふたつの力がひとつになったとき
私のなかの空もまた、広がりはじめる。
「約束だよ」
忘れてしまいそうなほど、優しい約束だったね。
声に出さなくても、あなたの中でちゃんと芽吹いていた。
気づいた時にはもう、道ははじまっていたんだよ。
見えなかっただけ。
誰かの言葉じゃなく、心の奥でいちばん素直な場所が、そっとうなずいた瞬間を、あなたはまだ覚えている。
だから、信じていて。
疑いそうになったら、静かな時間の中で手をあててごらん。
あのとき交わした目に見えない約束は、ちゃんと、ここにある。
ーーねぇ、大丈夫。
忘れてないよ。
約束だよ。
「傘の中の秘密」
雨の日は、世界が少し静かになる。
足音が吸い込まれて、
景色が水彩画みたいにぼやけて、
まるで、自分の呼吸だけが確かに響いているような気がする。
今日はひとりで歩いているけれど、
傘の内側は不思議と温かい。
この小さい空間にだけ、
ほんの少しの誇りと秘密をしまっている。
誰にも見えないところで、
私は私の道を、静かに磨いてきた。
ひとつずつ、ていねいに。
派手ではないけれど、確かな手応えがある。
外から見れば、ただの雨宿りかもしれないけど、
この傘の中で私は、
自分の力と向き合っている。
頼るよりも信じるほうを選んだ、あの日から。
雨が上がる頃、きっとまた、
新しい空の下で歩き出せる。
今はそれで充分だ。