「傘の中の秘密」
雨の日は、世界が少し静かになる。
足音が吸い込まれて、
景色が水彩画みたいにぼやけて、
まるで、自分の呼吸だけが確かに響いているような気がする。
今日はひとりで歩いているけれど、
傘の内側は不思議と温かい。
この小さい空間にだけ、
ほんの少しの誇りと秘密をしまっている。
誰にも見えないところで、
私は私の道を、静かに磨いてきた。
ひとつずつ、ていねいに。
派手ではないけれど、確かな手応えがある。
外から見れば、ただの雨宿りかもしれないけど、
この傘の中で私は、
自分の力と向き合っている。
頼るよりも信じるほうを選んだ、あの日から。
雨が上がる頃、きっとまた、
新しい空の下で歩き出せる。
今はそれで充分だ。
6/3/2025, 8:23:44 AM