【生きる意味】
大きくてふわふわなパンケーキを切り分けて口に運ぶ。
うん。やっぱり美味しい!
広告の写真を見たときから絶対美味しいと思っていたが、想像以上の美味しさだ。
この日のために仕事を頑張ってよかった!
たまの休日に美味しいものを食べるのが、私にとっての生きる意味。
生きる意味なんて、そんなものでいいのだ。
たとえどんなに小さな事でも、その人が幸せを感じて、また明日も頑張ろうって思えるなら。
それは立派な生きる意味。
【善悪】
これは一般的には『悪いこと』だろう。
さっきまで命だった肉の塊を埋めながら思う。
でもこれ以外に方法はなかった。
「これなら大丈夫だろう」
「……そうだね」
二人で平になった地面を見つめる。
あの子はずっと無表情だった。
これを運んでいる間も、埋めている時も、ずっと。
ただ俺に言われた通り動いているだけだった。
「……あのさ、ありがとう」
ふいに告げられた言葉に視線を上げる。
あの子は笑っていた。
雨と土まみれのぐしゃぐしゃな姿には場違いな、晴れやかな笑顔だった。
俺がずっと見たかった、心の底からの笑顔だ。
これは『悪いこと』だ。
でもこれであの子が笑えるのなら。
俺にとっては『善いこと』なのだ。
【流れ星に願いを】
流れ星。
見た目は確かに綺麗だが、正体はただの宇宙の塵。
だから願いを叶える力なんてない。
だけど、
「……はぁ、すごかった〜! ねぇねぇ、君は何をお願いした? 私はね〜」
彼女の笑顔がとても眩しくて、綺麗だったから。
その笑顔がずっと続けばいいと、星に願った。
【たとえ間違いだったとしても】
「あのさ、ホントにいいの?」
少し後ろから聞こえていた足音が止まり、声をかけられた。
振り返ると、いつも笑っているアイツとは思えない表情の消えた顔が見えた。
そんな顔もできたんだな、なんて場違いな考えが頭をよぎる。
「何が? どれの事言ってる?」
「何もかも全部。
……今ならまだ引き返せると思うけど」
そっと指された先はズボンのポケット。
中には少し前にうるさくて電源を切った俺のスマホが入っている。
「それお前の両親からだろ。今出ればまだ────」
「あ、悪い。スマホどっか落としたわ」
ばしゃん、と間抜けな音が響く。
海に浮かぶ薄い板を、奴はぽかんとした顔で見つめる。
しばらくして二人して堰を切ったように笑いだした。
「ふ、あっはは! お前、ホントにバカじゃねぇの!」
「お前こそ。ここまできて戻る訳ないだろ。今日の為に全部捨ててきたんだから」
「そうだったな、お前はオレなんかのために親と絶縁までしたんだもんな。
ホントお前はバカだよ……」
ぐす、と鼻を啜る音がする。
「なぁ、オレらは世間一般では間違ってる関係だけどさ。それでも一緒にいてくれるか……?」
「何度も言わせんなよ。間違いだろうが周りに認められなかろうが、ずっとそばにいる」
たとえ間違いだったとしても、これが俺達の答えで、正解だ。
【何もいらない】
『いい子』になれば認めてくれると思っていた。
家の事はなんでもやった。
学校でも皆が嫌がる事を率先して引き受けた。
沢山勉強していつもテストで100点をとった。
そんな事しても無意味だと貴方は言った。
アイツらは俺達の事を見ていない、と貴方は言った。
そんな事はない、と私は言った。
初めて貴方と大喧嘩した。
もういい、と言って貴方は出ていった。
そのまま二度と帰ってこなかった。
貴方はいつも、私を気にかけてくれていたのに。
貴方以外何もいらないと。
気付いたのは貴方がいなくなってからだった。
残ったのは『都合のいい子』だけ。