【たとえ間違いだったとしても】
「あのさ、ホントにいいの?」
少し後ろから聞こえていた足音が止まり、声をかけられた。
振り返ると、いつも笑っているアイツとは思えない表情の消えた顔が見えた。
そんな顔もできたんだな、なんて場違いな考えが頭をよぎる。
「何が? どれの事言ってる?」
「何もかも全部。
……今ならまだ引き返せると思うけど」
そっと指された先はズボンのポケット。
中には少し前にうるさくて電源を切った俺のスマホが入っている。
「それお前の両親からだろ。今出ればまだ────」
「あ、悪い。スマホどっか落としたわ」
ばしゃん、と間抜けな音が響く。
海に浮かぶ薄い板を、奴はぽかんとした顔で見つめる。
しばらくして二人して堰を切ったように笑いだした。
「ふ、あっはは! お前、ホントにバカじゃねぇの!」
「お前こそ。ここまできて戻る訳ないだろ。今日の為に全部捨ててきたんだから」
「そうだったな、お前はオレなんかのために親と絶縁までしたんだもんな。
ホントお前はバカだよ……」
ぐす、と鼻を啜る音がする。
「なぁ、オレらは世間一般では間違ってる関係だけどさ。それでも一緒にいてくれるか……?」
「何度も言わせんなよ。間違いだろうが周りに認められなかろうが、ずっとそばにいる」
たとえ間違いだったとしても、これが俺達の答えで、正解だ。
4/22/2026, 2:56:17 PM