【完璧だから】
この世には完璧など存在はしない。
だってそれぞれの子によって“完璧”の基準が違うから
けど。あの子の走りは、学園での、レースでの立ち振る舞いは、態度は───
『すべて』において誰も劣っているとは思わなかった。この世には完璧はない。けれど、あの子には確かに、確実に皆が認めるような完璧があった。
完璧なのに話しやすい
強いのに優しい
かっこいいのにどこかおもしろい
そんな完璧な矛盾が彼女にはあった。
もしわたしがその完璧さを持っていたら、みんなどう思うのだろう。
彼女と同じようになれるのだろうか。
きっと彼女だからこそだからだろう。今のこの世界を、歴史を、レースを創っているのは。
それがすごくかっこよくて、憧れて、煌めいていて、眩しくて、
ちょっとだけ────
憎い。
【泡沫の主役】
──今日は、正確には昨日。僕の主役の日だった
本当に、泡沫の一時だった。
一瞬で僕の1日が始まり、一瞬で僕の1日が終わってしまった。
けれど、確かに覚えている、見えている。
夢でも、幻でもないという証拠が。
あなたから貰った言葉、僕がわたしにあげたもの。
たとえ刹那のひとときが過ぎ去るとしても、わたしの心にははっきりと覚えている。
これまでの軌跡と共に。
また今日から、新しいわたしに挑戦してみようか。
【ティアラの代償】
わたしは、初めてティアラを期待されていたあなたから奪った時も当然、3つのティアラをとった時も、ブーイングばかりが聞こえた。
どうして
ふざけないで
ブーイングは何度聞いても、何度投げられても慣れることがない。慣れるはずがないと思った。
だって、今だって3回目なのに泣きそうになってる
けど、耳をすませてみるとどこからか拍手の音が聞こえた。
トレーナーさんが、あなたが、出走した同世代の子達が、拍手をしてくれた。
ブーイングまみれのわたしに注がれた小さな勝利の祝いの瞬間だった
【あなたと伸ばすふたつの手】
今でも覚えている。
あなたがくれた小さな優しさ。
あなたは笑って「そんなことあったっけ」と笑った。
小さなわたしを、小さなわたしの夢を今の大きなわたしに、大きな夢に育ててくれた
あなたとだからここまで来れた
あなたとだからどんなことも頑張って耐えれられた。
どんなときもわたしに優しい言葉をかけてくれて、どんなときもわたしの隣にいてくれて
この先きっとあなたとならどこまでも走っていける気がするの
あの届きそうな、届かない星も。偉業も、越えていけそう。
あなたの隣で、あなたと一緒なら
【どこまで】
雨の中、何かから逃げたいのか、何かを追い求めたいのか分からないまま走った
気づけば、しゃっくりをあげていた。泣いているのだろう。雨とは違う、暖かい雨が頬をつたう
なんで
どうして
何に対する疑問かも分からないまま足が疲れて下を向いて泣きじゃくっていた。
雨だからだろうか。周りには誰もいない。
不可能を可能にすることは限りなく厳しい。ようやくこの身でわかったことだ。
もう、帰ろう
そう思い顔を上げた。気づけば雨は止んでいて太陽が出ていた。
そして、虹が出ていた
あぁ、そうか。やまない雨はない。いつかわたしの中に振り続けるこの理由もない雨の中、光がさして虹が出るかもしれない。
なら、このまま突き進もう。この旅路が続く限り